ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

至高のKING'S SINGERSを聴きにミューザへ。

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180601 噂には聞いていたが、これほどとは!

暗闇の舞台に、ロウソクの明かりほどの光量を顔に受けて、6人がしずしず登場。すでに割れんばかりの拍手。手にしているのはマックのタブレット。そのまま歌が始まる。歌い終わるとやっと舞台が明るくなり、一番日本語に堪能と思われるテナーのジュリアン・グレゴリー(母親が日本人)がタブレットを見ながらであるが、日本語で挨拶と曲の解説。こうして、順繰りに日本語での解説がリレーされていく。洒落た演出である。

 

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驚きのハーモニーの連続で、完全に打ちのめされた。どうしたら、こんな絶妙なハーモニーが湧き出てくるのだ。最近、日本でも若い連中でアカペラで歌うユニットも珍しくなくなってきているし、彼らのレベルも際立ってはいるが、キングス・シンガーズの前では、さすがに霞んでしまうような気がしてしまう。

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このほか、最後に、譜面台や用意したマックのタブレットなどを後ろに下げて、イングランドの古い歌「スカーボロ・フェア」(スカーブラかスカーバラと聞こえたが)、アイルランド民謡「ダニーボーイ」、最後になんとロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」!

これは、歌ではなく、いわゆるヒューマン・ビート・ボックス風とでも言えばいいのか、しかも笑いの要素も入れた、彼らの持ち歌の中ではかなりユニークなものだろう。

6人とも、幼少時から音楽、とりわけ声楽に親しむ環境にあり、そして後年、名門ケンブリッジ大学に学びオーディションを経て、50年の歴史を刻む世界トップクラスの声楽アンサンブルのメンバーに選ばれたというわけだ。

バリトンの一人、クリストファー・ガビタスが「2008年の40周年を迎えた時のメンバーで、今なおメンバーに残っているのが自分だけになったことに驚いている」と語っているように、何代にもわたってここの伝統が受け継がれてきている。

今回の選曲には、彼らのためにわざわざ英語で作ったという武満 徹の「手づくり諺」や、ジョン・ラターの「怖がらなくていいよ」が含まれていたのは、まことにラッキーであった。

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