ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「サバービコン 仮面を被った街」

180620 SUBURBICON 米 105分 製作(共)・脚本(イーサン兄弟と共)・監督:ジョージ・クルーニー

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それほどの評判ではなかった作品だが、期待以上に楽しめた。コーエン兄弟の脚本は悪くないし、展開に意外性もあり、自分にはクルーニーの力作と思えたが・・・。

時代設定は1950年代、誰もが憧れる夢のニュータウンという触れ込みの街で起きる二つの事件。一つは主人公一家での保険金詐欺事件、もう一つは道路を挟んだ家に引っ越して来た黒人一家に対する暴動事件。

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この作品に興味を持ったのは、ジュリアン・ムーアが出演すること。似たような時代設定で、同じく黒人問題を取り上げた「エデンより彼方へ」(2002)での彼女の好演が忘れられない。この時代設定に彼女ほどぴったりはまる女優は少ないと思う。

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閑静な新興住宅街に突然黒人一家が引っ越して来たから、たちまち騒然とする周辺の白人住人たち。最初は、それを見越したかのように当の黒人一家も気丈に振舞っていたが、次第にエスカレートする騒ぎで・・・まさかの展開が終盤に。

これは実際にあったニュータウンニューヨーク州ペンシルヴァニア州に出現したレヴィッタウン(LEVITTOWN)がモデルになっていて、黒人一家を巻き込む暴動も実際に起きていたらしい。

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そうした大人たちの騒ぎをよそに子供同士はすぐに仲良しに。

多額の保険金を掛け、双子の姉を強盗殺人を装って殺害するガードナー(マット・デイモン)、強盗になり済ませたマフィアと示し合わせていて、警察の面通しに立ち会うが、なんとその場に子供が居合わせ(うすうす真相に感づいている一人息子が車の中に隠れて親の後をつけてきたんだろう)、「あ、あのおじちゃんたちだ!」

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一方、詐欺に感づく保険屋(オスカー・アイザック)が登場、この辺りから俄然緊迫感が増す。

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オスカー・アイザックグアテマラ出身の39歳)の演技が小気味好い。愛想よく現れて、「オタクたちの悪事、俺はみんな知ってんだよ。俺にも一枚加わわらせてもらうとするか」

その後、この白人一家で唯一の生存者になった少年が、暴動騒ぎも収まり、元の静けさが戻った街でキャッチボールを始め、カメラが上空へと引いてジ・エンド。なかなかうまい締め方だ。

みんなが幸せになれる夢のニュータウンと大々的にふれこんだものの、一皮むけば、このザマでっせというお話。そして未来に夢を繋げるようなエンディング。

#51 画像はIMDbから。