ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「万引き家族」

180627 原案・監督・脚本・監督:是枝裕和 120分

f:id:grappatei:20180628115109j:plain

実の家族以上にやすらぎに満ちている偽家族。収入源は、ばあちゃん(樹木希林)のわずかな年金、信代(安藤サクラ)のクリーニング屋でのアルバイト代、そして万引き。

一人一人に曰く因縁があり、いつ崩壊してもおかしくない砂上の楼閣。汚部屋に近い一軒家。案外、破綻が早くなる。ばあちゃんが楽しかった海水浴の翌朝、ぽっくり。誰にも知られては困る一家、すばやくばあちゃんを床下に。

f:id:grappatei:20180628115536j:plain

傍目にはほんとうの家族にしか見えない一家だが・・・。

これまでの是枝作品にも共通するが、人というのは、ばかなことを繰り返すものだが、どうあがいても一人では生きていけない、かわいそうな存在で、愛こそが心の空隙を埋め、闇を照らし、自分たちを支えていることにはなかなか気付かない。

血は繋がっていないのに、親子以上の絆が芽生えている治(リリー・フランキー)のところで一夜を明かし、施設へ戻る翔太(城桧吏)を見送る治、バスが走り出し、懸命に後を追う治の心が切ない。

凛と名を変えたゆり(じゅり)が、本当の両親の家に戻されたものの、そこは愛の感じられない空漠とした世界。バルコニーに出て踏み台に乗り、凛が遠くを見るラストシーンが秀逸。

f:id:grappatei:20180628120643j:plain

カンヌではすっかり常連になった是枝裕和と出演者たち。監督が絶対的な信頼を置いているメインキャスト陣。翔太役の男の子は、撮影中にどんどん成長していき、終わりの方では、体つきも風貌を変わっている。

#52 画像はALLCINEMA on lineから