180819
ダヴァーイとはロシア語で、英語のgoに近いニュアンスらしい。そう言えば、シベリア抑留者による当時の記録の中にこの「ダヴァーイ、ダヴァーイ!」が出てくる。この場合は、「ほら、はやく行け!」のような意味合いだったようだ。
そんな暗いイメージを語っては申し訳ないのだが、このオーケストラでは、「行こうぜ!」"Let's go!!"としてオケの名前として採用。事実、舞台に登場する舞台袖で、ダヴァーイと声を掛け合っているのが、客席からでも聞こえていた。
オケ名の由来はともかくとして、ロシアものを得意としている珍しい楽団!今日の演目を見れば一目瞭然
くるみ割り人形と来れば、どうしても組曲の方をイメージしてしまうし、中学生のころに何度もみたディズニーの「ファンタジア」の映像が浮かんでくるが、それは「金平糖の踊り」、1曲のみ!
バレエに趣味がない者には、こういう事実はかなり意外に映った。
6曲目「雪片のワルツ」では、10名からなる児童合唱団が下手側の壁の前でかわいらしい声を披露してくれた。小学校の低学年から中学生ぐらいまでという感じ。
これも大いに楽しみしていた楽曲。偶然ながら、この作品も「ファンタジア」に取り上げられているから、どうしても聞きながら、太古の宇宙や地球誕生時の海と陸、アミーバなど原生生物や、巨木、恐竜、大地震、氷河時代など一連の映像が浮かんでくるから困ったものだ。
それにしても使用楽器の多さとその数には圧倒される。
コントラバスが9本、うち3本はフレンチスタイルのボウイングだから、例によってピッツィカートではジャーマンスタイルとは逆に上に突き上げる格好になるのだ。
ホルンは8管で、8人の奏者のうち二人が持ち替えでワグナーチューバを吹く。小クラリネットやピッコロトランペットなども普段は見られない珍しい楽器。
また打楽器奏者の忙しいこと!右に左に移動しつつ、さまざまな種類の打楽器を叩き回るのを見るのが、また楽しい。
楽器名にもキリル文字が使われている!こういうプログラムは初めて見た。また場内アナウンスにも日本語の他にロシア語も使われるという念の入れよう。
何気なくファーストバイオリンの手前の方を見ていたら、見慣れた姿が。東京交響楽団のコンサートマスターの一人、廣岡克隆が最後尾で賛助出演していた。
蛇足ながら、演奏者を一人一人見ていると、ほんとうにさまざまだ。コスチュームも男性陣はあまり変わったスタイルはないが、女性陣にはノースリーブは当たり前だが、タンクトップ姿もちらほら。
首席フルートは、いかつい巨漢で、フルートにはまことに似つかわしくない偉丈夫。演奏時に大きく身体を前後に揺するし、挨拶の時は、その都度、素早くフルートを縦に構える姿が印象的。その隣の首席オーボエの男性、両側を刈り上げ、後頭部から長く垂らした頭髪が特徴。一度見たら忘れられない。ついでに大太鼓も丸太のような両腕で豪快に叩きまくり、日焼けした風貌も長距離トラックの運転手風で、見ていて実に楽しかった。やはりこういう曲の時は1階席でなく、俯瞰できる2階席の方が断然楽しい。
#49 文中敬称略