ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「陸軍前橋飛行場 〜 私たちの村も戦場だった〜 」

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こういう優れた作品を見ることができて幸いだった。これはソプラノ歌手、鈴木麻里子がFBで紹介してくれたので、是非見たいと思っていた。彼女の伯父にあたる鈴木越夫の原作を基に映画化されたもの。上のクレジットにも見られるが、鈴木麻里子はエンディングでも自らの歌唱を披露しているが、劇中、少女風に歌っている軍歌も実は彼女の歌声だったとは後で知らされた事実。まったく異なる歌い方をしているので、見ている最中は気づかなかった。

映画はドキュメンタリーなので、主として当時村で空襲の様子などを実体験していた住人たちの証言と実写フィルムで構成されている。現在、80~90歳の人たちだから、当時はせいぜい小学校低学年から高学年程度だったろう。いずれの方々も語り口が実に明快で、ちょっと驚く。ちなみに福田元首相は小学校3年生で終戦を迎えたとか。

こうした市井の、普通の人たち、それも当時子供だった人たちのありのままの証言ゆえ、当時の大人たちとはまったく異なる感性で受け止めていたはずであり、それだけに価値が高いと言えよう。

細かい内容および映画された経緯については、上のパンフの通り。それにしても、前橋のようなところに飛行場があったなどという話は初めて聞いたし、こういう戦争秘話はやはり気づいた人たちが後世へ語り繋いで行かないとならないのだろう。

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終映後の福田元総理と加藤陽子東大教授のトークも、大変興味深く聞いた。元総理は、さすがに話がうまい。巧まずして、人を引き込む語り口には感心。加藤教授はいかにも学者然とした、と言っても決して硬いイメージではないのだが、整理された話し方ゆえ、理解しやすい。

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発端になった一つに米国国立公文書館が前橋のようなところの航空写真などを保管してあり、丹念な日記を綴っていた住谷 修(しゅう)の記録と照合することで、より具体的、立体的に当時の様子が判明したらしい。

これに対して、我が国の公文書管理の実態ははなはだ遅れており、公文書管理法が成立したのは、2009年であり、福田元総理が内閣官房長の時代に着手、2008年に総理に就任して成立にこぎつけたものと言う。それだけに、今日の作品は元総理にとっても、意義深いものと映ったようだ。

法律はできたが、政官ともに、まだまだ意識がなさすぎるから、モリカケ問題やら南スーダン陸自日報問題のような公文書偽造・廃棄が平気で起きている現状を思うと、寒心に堪えない。

このような戦争秘話は、まだまだ明らかにされていないものが数多く残されているはずで、本作品がきっかけになって、明るみに出ることを期待している旨、飯塚俊男監督(上の写真の中央)も舞台挨拶の中で話していた。

予告編

#64 文中敬称略