ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

マーラー8番「千人の交響曲」@ミューザ川崎

180916

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初めて生で聴く機会が。噂にたがわず、まあ凄い曲だ!会場に入って、舞台を見たら、そこにはびっしりと椅子やら大型楽器や打楽器類が居並ぶ景観に思わず「オォ!」っと。

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とりわけ奥に置かれたコントラバス13本の威容に圧倒される。この上のP席だけでなく、両サイドも聴衆の姿はなく、間もなく合唱団で埋め尽くされることに。

下段側には名門NHK児童合唱団の可愛らしい少年少女たち、中学3年生から小2までらしい。この子たち、上に居並ぶ先輩たちをあざ笑うが如く、暗譜で歌い通したから素晴らしい!聞けが、本番直前までは譜持ちだったらしい。指導者に大喝采である。

そして開演!いきなりパイプオルガン、合唱団まで含めてトゥッティの大音響。腰を浮かさんばかり。ワクワク感が充溢する。金管の咆哮、打楽器の地鳴り・・・。こりゃまた途方もないマーラーになりそう。

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千人というのは、白髪三千丈の類の話かと思ってたら、なんと初演で千人を超えたそうだ。興行師が勝手にこう呼ぶことにしたのが、現在まで続いているというわけだが、作曲家自身がこう呼ばれるのを嫌悪していたというから、面白い。今日は、オケも入れて400人強だったらしい。収容力からして、これ以上は無理。(聴衆席をもっとつぶせば可能だが)

 

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第1部が30分ほど。聴いている側にも疲労感がたまる感じ。第2部が約60分、つまり全曲で1時間半という長丁場だ。合唱隊も第九などに比べるとすこぶる出番が多い。ただ、座って聴いている時間も半分以上はあるから、体力の消耗はそれほどでもないのかも。老練な声と児童合唱団の若々しい春のような歌声を、さすがに上手に使い分けている。

オケの方も、さまざまな楽器を総動員していて、特に2部ではマンドリンが3丁登場。出番はほんとに短くて、しかも聞こえるか聞こえないほどの演奏で奏者はちょっと気の毒。

他に、オルガン、チェレスタ、ピアノ、アルモニユム、鐘とは別にグロッケンシュピール、ハープ3台、鉄琴、ドラ、シンバル三つ、ホルン9本、トランペット、トロンボーンは普通の本数だが、バンダ用に、それぞれ4本、3本という賑やかさだ。どの部分でどの楽器が鳴っているかを、オペラグラスでチェックするのも愉快だった。

合唱隊には、愚亭が所属する地元合唱団からソプラノとアルトが一人ずつ参加していたが、他にも男声陣には知った顔、少なからず。いつか自分も必ず歌ってみたい。

さて、ソリスト陣だが、これがまた実に豪華な顔ぶれで、何れ劣らぬ巧者ぶりを最大限に発揮していた。ソプラノに3人も配する贅沢ぶり。3人目の中山美紀は、出番がほんのわずかで、しかもパイプオルガン横で歌うのだが、気づくのが遅れた。

森谷真理は、今売り出し中、人気急上昇中の話題のソプラノで、最高音をまったくぶれることなく長く伸ばす技術には改めておそれ入谷の・・・。またソプラノ2を歌った中江早希も負けじと大ホールに美声を朗々と響かせ、森谷真理も彼女の歌いっぷりを隣から観察するようなそぶり。互いに意識し、リスペクトしている雰囲気、ありあり。

メゾの中島郁子は過去何度も聞いているし、5年前のアプリコ第九では共演(?)もしているので、その実力のほどは熟知している。谷地畝晶子、出番多く、声量もたっぷりで、聞かせどころを作っていた。

テノール宮里直樹も前々から注目していて、実力を存分に発揮して聴衆を魅了。体格的にもパヴァロッティ2世風。楽しみだ。今井俊介の上手さは、先日のプッチーニ三部作でもたっぷり認識済み。バリトンもそうだが、清水那由太の受け持ったバスにも、これらのパートには考えられないような高音を歌わせ、マーラー先生も敢えて過酷な技を課して、楽しんでいるかのよう。

エストロ坂入健司郎は、地元川崎出身の、実に30歳!!慶応法学部出身という変わり種。20歳でこの東京ユーベントゥスを立ち上げたというから、音楽的な才能に加え、プロデュース力にも長けた人物なのだろう。

このオケ、ユーベントゥスというだけあって、団員が実に若い!(トラは別にして)船出直後に例の東日本大震災で、使用予定だったミューザが釣り天井崩落という大ダメージを受け、会場探しで大変だったらしい。艱難辛苦の末での今日の千人交響楽の大成功、感動も格別だったことだろう。

この曲、やはり「復活」に出てくるような旋律が随所にあって、なにか懐かしいような気分になる。バンダを多用するところも同様。第2部で、最後列の男声合唱団員13人が左右に移動すると、両脇からバンダが登場して、中央部、ちょうどパイプオルガンの真下の位置に並んで演奏。

さらに、4階席中央部にもバンダが移動して演奏するなど、あちこちから金管を響かせることがことのほかお好きなようだ。

面白い光景がいくつか。

一番手前のハープ奏者、他の楽器の演奏中に、しきりに調律を繰り返していたが、聴衆に聞こえないように、鳴らすのはティンパニーなどと同じだが、延々とやっていたのは、ちょっと不思議。

末席の第1バイオリン奏者が10分も経たないうちに退場、しばらくして、何食わぬ顔で自席へ戻り、すぐ弾き始めたのは?(多分、トイレ)同様に、上手側からも演奏中に女性奏者が退場した。いつ戻ったか不明。(戻らなかったかも)

#57 文中敬称略