ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ヒトラーと戦った22日間」

180921 SOBIBOR 118分 露・独・リトアニアポーランド合作 監督・主演:コンスタンチン・ハベンスキーサンクトペテルブルク生まれのロシア人、46歳、俳優で、本作が初の監督作品)

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あの時代のこの手の話には詳しい方だと思っていたが・・・この原題、SOBIBORがアウシュビッツ同様の絶滅収容所だということを初めて知った次第。また、これは生き延びた主人公の話を基に作られた作品だが、こうした収容所から脱出できた一群があったことも知らなかった。

ソビボールは、現在のポーランドの東端、ウクライナとの国境近くの寒村。映画は、ソビボール駅にユダヤ人が到着するところから始まる。「ようこそソビボールへ。新しい生活が待っています」と繰り返しドイツ語でアナウンスが流れ、ユダヤ人たちの結成する弦楽四重奏団が、なぜかヴェルディアイーダからの一節を演奏している。

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到着後、直ちに手に職のある者とない者が選別され、大半がガス室送りになる自らの運命を知る者は少ない。

収容所では、ユダヤ人によるサボタージュなど”事件”があるたびに、10人に一人の割で、あたかも家畜を屠殺するがごとく処分される、もはやそれは日常風景。

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ミンスクでの収容所脱出経験のあるサーシャがリーダーになり、脱走計画が進む。独軍の敗色が濃くなり、近くにある別の収容所が解体されたというニュースが入り、一刻の猶予もなく、ついに決行の日を迎える。

事前にサーシャ中心にして決められた手はずどおり、まずは将校たちを順番に巧みにおびき出しては、次々に銃器以外の斧、鉈、ナイフ、ハサミなどで殺害し、武器を手に入れる。そしてあとは一斉に走る、走る・・・(ロシア語のエンドロールで流れる字幕には、400人が脱走、100人が途中で死亡、150人が近隣住民の通報で捕まったと流れる。それでも150人が無事生還できたことはまさに奇跡的と言える)

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合作ではあるが、ロシア映画という位置付けらしく、2019年度のアカデミー外国映画部門にはロシアからの正式出品作品となった。言語は何カ国語で作られ、多国籍出演者はそれぞれの国の言葉で話して、あとでダビングしたとか。ちなみにクリストファー・ランバートはセリフはすべて英語だったとか。撮影はリトアニアの首都ビュリュヌス近郊。

この邦題はやや不出来。無論、ソビボールと原題のままにするわけには行かないだろうが、なんでもヒトラーを持ち出せば観客動員できると考えるとすれば、それは安易すぎないか。

 

#71 画像はIMDbから