ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「恐怖の報酬」

190109 SORCERER (魔術師)1977 米 121分(ディレクターズ・カット)、92分短縮版(米国以外で上映時)今回は待望のノーカット版がやっと日本公開。4Kらしいが、たまたま自分が見た地元上映館では2K上映。

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貴重な日本語ポスター

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仏語版ポスター

言わずと知れた1953年製作のアンリ=ジョルジュ・クルゾーの傑作「恐怖の報酬」のリメイクということになっていて、フリードキン監督も事前にクルゾーから許可を得ているし、エンドロールにも同監督に捧げるという文字が入っている。

だが、オリジナル版とは、かなり変更点が多く、別の作品と称してもいいぐらいだ。山の上の油田の大火災を消すためにニトロが必要となり、それを2台のトラックに分乗する命知らずの素性の知れぬ男たちが賞金目当てに応募して、道中とんでもない困難に出遭いつつ・・・と、そこだけは共通する。

短縮版を公開時にリアルタイムで観ているはずだが、細部はほとんど記憶に残っていない。ということはさほどのインパクトを感じなかっただけでなく、クルーゾ版に比較して余りに不出来で落胆が激しかったということのようだ。

だが、今回、カットされた30分がどれほど重要だったかがよく分かるし、とりわけラストシーンがまるで違う形になっている。短縮版では一応ハッピーエンドだが、120分版では、まるで逆になっている。

なぜこの連中が中米のポルベニール(架空の町)へ流れ着いたかが、前半、メキシコの地方都市→エルサレム→パリ→ニュージャージーのエリザベスという風に場所を変えて描かれている。(クルゾー版では、いっさいこの部分は描かれていない。)

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ポルベニールの町外れ(撮影はドミニカ共和国の某地方都市)

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食い詰めたわけあり4人組

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1番の見せ場、水かさを増した濁流にかかる古い木製の橋を必死に渡ろうとする1号者

一人が車外に出て、誘導するのだが、このまま轢いて行くとばっかり。オリジナル版では爆発でできた窪みに石油がたまり、ゆうどうするシャネル・ヴァネルがつまづき、そのままイブ・モンタンが轢いていくシーンが余りに強烈だったので、つい・・・。

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こちらはもっと危険だった2号者。渡り終えた瞬間、ばらばらになって流される橋

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一難さって、また一難。今度は大木が横たわっている。さあて、どうする・・・?

フリードキンは、当初、マックウイーンを主人公に充てたかったらしいが、マックイーンが嫁さんのアリ・マクグロウと一緒に出演させてほしいという条件を嫌って、この話は流れたとか。その後、クリント・イーストウッドジャック・ニコルソンポール・ニューマンジーン・ハックマンロバート・ミッチャムなど、錚々たるスターと出演交渉するもすべて不調で、ロイ・シェイダーしか残っていなかったというから、いかに難航したかということだろう。

仮に、マックイーンで決まってれば、マルチェロ・マストロヤンニリノ・ヴァンチュラが出る可能性が高かったというだけに、惜しまれる。もしこのキャスティングが成功していれば、興行的にも大成功間違いなしだったろう。

おかげで、ほぼ同時期に封切られた「スター・ウォーズ」に食われて、惨憺たる結果に終わったそうで、あまりにも不運だったというしかない。しかし、本作を最高の作品と高く評価する映画人も少なからず。

ただ、この原題には、やはり首を傾げたくなる。これも敗因の一つではないかしらん。

#2 画像はIMDbから。