190113 滅多に聞けない名演奏!ヴェルレクを生で聴けて、大満足!
こんな名演奏会が近くのホールで開催されたのに、気づくのが遅れて、やっと買えたチケットはなんと4階席。初めてこんな高い席に陣取った。でも最前列の中央寄りで、聴覚的には問題なし。視覚的にもオペラグラス持参だったので、合唱団員(160名ほど?)の顔も一人一人確認できた。知っている顔はわずかに1名。
アマチュア合唱団とは言え、オーディションで選ばれた精鋭たちで、驚くなかれ、これだけ長く難解な曲を暗譜で歌ったのだ。全体はほぼ100分で、合唱団が歌っている時間はおおむね75分ほどか。いずれにしても、相当な長丁場である。(これに比べると、第九の合唱部分は約12分、「復活」に至っては8分弱だから、いかにヴェルレクが大変かが分かる)
合唱のことから書き始めたが、たまたま現在、自分もヴェルレクの練習中であるため、どうしても興味は合唱へと向かったのだが、オケも独唱者たちもプロ中のプロであり、驚嘆すべき演奏だった。ソリストの4人のうち、ベースは当初予定のリアン・リーが体調不良でジョン・ハオに変更になったが、まったく問題のならない変更。
4人とも素晴らしい歌唱を聴かせてくれたが、中でもソプラノの森谷真理の、何とも表現できない高音の輝きには忘我の境、もちろん清水華澄も勝るとも劣らない技の限りを尽くしてくれ、名手福井 敬もオペラなどより、こうした宗教曲の方が上手いと思わせる熱演だった。急遽登場のジョン・ハオ、伸びやかな低音がすーっと耳に入る。
面白かったのは、ソプラノとベースは譜面台に楽譜を置いて、アルトとテノールは手持ちで歌っていたことで、目ている側からだと、譜面台に置いて歌う姿の方が心地よく感じるのは何故だろう。
ロレンツォ・ヴィオッティ、まだ30前というから驚く。現在日本で大活躍中のアンドレア・バッティストーニより更に若いのだ!ローザンヌ生まれのイタリア系スイス人で、親父のマルチェッロも聞こえた指揮者だった。ヴィオッティと聞くと、自分でも演奏したことがある18世紀のヴィオリニスト兼作曲家、ジョヴァンニ・ヴィオッティを思ってしまうが、どうやら関係ないようだ。
冒頭、Requiemの歌い出し、究極のピアニッシモの響きには驚く。ヴィオッティの厳しい要求に応えて、あそこまで絞り込んだ演奏を極めた東響と合唱も見事だ。そして怒りの日の例の激しい導入部の総毛立つような物凄さ、なんでも前日のサントリーホールでの演奏ではバス・ドラムが演奏中に穴が開くというハプニングがあったらしい。
100分、ぶっ通しで演奏者は一様に厳しい時間だったろう。聴く方もそれに応えるかのようにしわぶきひとつ発することなく、あの大空間が徹頭徹尾静寂の中で、この歴史的と呼ぶにはいささか大げさかも知れぬが、名演奏に酔いしれていた。終演して、熱狂的大拍手とブラヴォーが館内をゆるがすまで10秒以上もあったろうか。演奏者も聴衆も、終演を惜しむかのように長い間合いが印象的だった。
#3 文中敬称略