ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「天才作家の妻」

190222 THE WIFE 101分 スェーデン・米・英合作 監督・ビョルン・ルンゲ(58歳、スェーデン人)

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グレン・クローズが主演でなければならなかった作品だろう。本作の成功はなによりまず彼女の名演技に尽きると言える。

ノーベル文学賞授賞式での夫ジョセフ(ジョナサン・プライス)の、見事とも言える受賞スピーチに次第に表情を曇らせ、こわばらせていく妻ジョーン(グレン・クローズ)、そしてそのまま帰ろうとする。慌てて後を追うジョセフ。

創造力はあるのに、表現力に欠ける夫の作品にジョーンが一手間加えることで、見違えるほどの作品に生まれ変わる、そんな夫婦の協働作業で次第に名声を確実にしてきたジョセフ。

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だが、実際にはいつのまにかほとんどを妻が書いていた?夫が書かせてきた?真相はどうだったか分からないが、妻にしてみれば確かなことは、自分がいなければ絶対に夫がノーベル賞作家にはなれなかったという、この一点に尽きる!

映画には描かれていないが、その点で、二人の間にはしばしば激しい言い合いがあり、別れる、別れないというやりとりが繰り返されてきたと想像される。それが、ついに授賞式での彼のスピーチで頂点に達し爆発した、という風に見える。

40年前、ベビーシッターとして彼の家庭に入り、いつの間にか妻の座に収まったジョーン、夫への愛は確かなものだった筈だが、ただいま現在、ほんとうにそうなのか、これまで何度も自答を繰り返しながら、この日を迎えた。

ノーベル賞授賞式を現在にし、若き日の二人、すなわち、教鞭を取る側と生徒という間柄だった時代をフラッシュバックで挿入させながら展開する。若き日のジョーン役のアニー・スタークグレン・クローズの実の娘である。あまり二人は似ていない。

夫、ジョセフを演じるジョナサン・プライスは奇しくもグレン・クローズと同じ1947年生まれの71歳。元々は舞台俳優。日本公開作品ではさしたる作品に出ていないが、本作ではなかなか好演している。

#9 画像はIMDbから。