ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「椿姫」@秋葉原ハンドレッドスクエア倶楽部(7F)

190223  3/10の本番に向けて練習が続くヴェルレクの指揮者で、オケだけでなく、合唱の指導もしてくれてる安藤 敬が主宰するLe Vociによる公演。

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演奏会形式と思っていたら、ちょっとした小道具も用意、演技も入る準本格オペラ。

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変わった名前のホールだが、要は100㎡のスペースがいつくかあって、主として会議場に使うことが多いようだが、ホールとしても使えるビルということらしい。秋葉原の駅から歩10分。

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いつものことだが、ヴィオレッタだけがこういう衣装での挨拶になるのが気の毒。

この人数ゆえ、かなりの部分をカットして上演したが、それでも休憩を入れて、2時間15分の長丁場。3回の休憩時間には、ワインを含む飲み物や菓子類が振る舞われ、3回ともワインをご馳走になってしまった。

タイトルロールの富永美樹は初めて聞かせてもらったが、幼少時からピアノは習っていても、歌はかなり遅くなってから始めたらしい。それにしては、見事な歌唱力で、特に1幕の最大の聞かせどころ、「花から花へ」のラストの最高音から低音まで上下動が激しく長いパッセージを驚くほど正確に音を刻んでいて、驚嘆の一言。最後のEsは当然出すと思っていたが、らくらくという印象。

アルフレード松岡幸太も、スピント系のやや太めの声で、しっかり歌った。多少癖のあるヴィヴラートは好みの領域か。この人もHあたりの発声には無理がなく、美しくだせるから、アルフレードには向いていると思う。

ジェルモンの追分 基、なんどかアルテ・リーベで聴いているし優れた技量のバリトンであることは承知している。雰囲気的にはレオ・ヌッチかな。(笑)2幕1場後半の聞かせどころ「プロバンスの海と陸」は、バリトンとしてこのオペラでの唯一の名アリアとも言える。それだけに、ことさらワクワクしながらこの場面を待つことになる。Bravo!がかかった熱唱ではあったが、敢えて厳しいことを言えば、イタリア語の発音にやや正確さを欠くということか。やはり一流の歌手は、発音にも、もう少し注意を払って欲しいと願わずにはいられない。もったいない。

それにしても、マエストロが幕の始まる前に短い解説をするのだが、これが実に説得力のあるもので、我が意を得たりとばかり思わずニンマリしてしまった。それは、皆さんが今聞いているのは「椿姫」ではありませんと切り出した原作アレクサンドル・デュマ・フィスの小説「椿姫」と、ヴェルディが作ったオペラ, LA TRAVIATAの対比話。

たまたま日本では、伝統的に「椿姫」として公演することが圧倒的に多いが、これはそろそろLA TRAVIATAに改めた方がいい。ついでながら、この「道を踏み外した女」の意味は、マエストロの解釈によると、高級娼婦としてアルフレードのようなウブな青年に真剣に惚れてしまうことこそ、娼婦道(?)にはずれているというもので、これには思わず唸ってしまった。

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このシリーズ(?)、第2回は同じ場所で6月8日18時開演で「ドン・カルロ」という発表がマエストロからあった。今から楽しみである。

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終演後の集合写真(フェイスブックからお借りしました)

#11 文中敬称略