190427
フランスでも滅多にやらないらしいオペラだから、もちろん愚亭も初めて観るオペラだ。シュトラウスのサロメとは、また違った展開で、最後の盛り上がりに欠けるというか、ややメリハリに乏しく、気の抜けた終わり方のように感じられた。
ただ、旋律の方はやはりフランス人作曲らしい、なにかこうゆったりと典雅な響きのようなものが感じらえて、悪くなかった。リヒァルト・シュトラウスが余り好きでないので余計にそう感じたのかもしれない。それにしても、東フィル、さすがに上手い。
二期会合唱団も、素晴らしかった!普段アマコーラスを聴く機会が多いので、たまにこうしたプロ集団の合唱を聴くと、陶酔するというより身の引き締まる思いの方が強い。
今日は前から2列目、右セクションの左端だから、通常なら決して悪い席ではないのだが、オケが舞台前面に陣取り、ソリスト陣が主に歌うのがその後ろだから、手前の弦楽奏者たちの間に顔が見え隠れするという、視覚的には最悪の状態。
二期会のコンチェルタンテ・シリーズが具体的に何を指すのか判然としないが、セミ・ステージ形式のことを指しているのか。すなわち、演奏会形式ではなく、最低限の振りを含むということなら、一定の空間確保が必要になる。舞台が狭いオーチャードの場合は、合唱団とオケの間にしか作れなかったということなら、やむを得ないと思われる。
それでも、サロメ(高橋絵理)とジャン(城宏憲)のカラミの場面だけ、オケの手前で演唱してくれて、手が届きそうな距離感でたっぷり堪能できたので、文句の言える筋合いではない。
タイトルロールの板波利加のもの凄さ、久々に堪能。やはりこうした豪快な役を演じるソプラノは彼女を置いてはなかなか得難いと思われた。エロデ王の小森輝彦、ドイツ物が得意と思われるが、こうした役もよく研究しているらしく、巧者ぶりを遺憾なく発揮、さすが大したものだ。
最近めきめき売り出し中の小林啓倫、冷酷とも言えるローマ執政官をうまく感じを出して端正な歌声が耳に残った。
そして最初に登場して第一声を響かせる高僧役、妻屋秀和、ひげも蓄えて、一段と貫禄が全身にみなぎり、日本では追随を許さないほどの堂々たる歌唱を披露して、館内を圧倒しまくっていた。
マエストロ、ミシェル・プラッソンは1933年生まれというから、ただ今85歳!巨体を持て余しながら、足取りも危なげに登場し、マエストロ椅子に腰掛ける。見ていても、はらはらするほどで、おそらくこれが日本でのラストステージという感じだ。途中、スコアを追えず、タクトを振りながら、震える左手でペイジを前後に繰り続けて、どうなることかと思ったほど。
部類の女好きのフランス男らしく、カーテンコールの際は、端役の金見美佳を強引に引き寄せほっぺにチュっとやんちゃぶりを発揮、これにはさすがに聴衆からは笑いが漏れた。
オーチャードホールの背面パネルはかなり凹凸が激しいのだが、そこを逆手にとって、うまく何種類か古代エルサレム付近の景色を映し出して、これが意外な効果を上げていた。
#21 文中敬称略 画像は東京二期会のHPからお借りしました。