ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「誰もがそれを知っている」

190607 TODOS LO SABEN (邦題の通り)、2018年 133分、西仏伊合作  脚本・監督:アスガー・ファルハディ(46歳、イラン出身、過去の日本公開作品「彼女が消えた浜辺」'09、「別離」'11、「ある過去の行方」'13、「セールスマン」'16 、4本とも本作同様、すべて脚本と監督を担当)本作は初めて同監督がイラン以外の資本で製作。

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実生活で夫婦になって最初の共演作品かな。

この監督で、この二人が主演、さらにアルゼンチン出身のリカルド・ダリン(瞳の奥の秘密 '09)共演となれば、見ない手はない。

過去日本で公開された作品に比べると、どんどん画面に引き込まれるドキドキ感が薄れ、ハテ?と思うシーンも少なくないが、やはり秀作は秀作!

舞台はマドリッドの北、約100kmにある小さな村。冒頭、村の聖堂の鐘楼内部で、鳩の羽音が不気味に響き、まさにこれから始まるドラマの不穏な空気を感じさせる。ここで戯れる若者カップル、うまい餌の撒き方だ。

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文字盤の割れ目から鳥たちが盛んに出入りする。

妹の結婚式に参加するため、はるばる南米から帰郷するラウラ(ペネロペ・クルス)と子供たち。親兄弟、親族、幼馴染らと旧交を暖め合う姿は、スペインらしく濃厚で、中庭での披露パーティーはいつ果てるともなく続く。

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楽しみが限られた村だけに、披露宴でのはしゃぎっぷりはハンパない。

そんな最中、ラウラの娘、17歳のイレーネが失踪するから、大騒ぎとなる。やがて型通り身代金要求の電話が入り、誘拐事件は深刻さを増す。だが4,000万円近い身代金を用意できる人物などいるはずが・・・いた、一人だけ。

狭い村社会独特の因習に包み込まれて、誰もが知っていることとは?イレーネは、一体誰の子なのか。かつて、ラウラの実家が貧困ゆえ、広大の作地を手放さざるを得なくなった時に得をしたのは誰だったのか。次第に複雑に絡み合った人間関係が明らかになり、後半は一気の展開を見せる。

事件は解決をみたものの、誰の顔にもやるせなさが漂う。特に身代金を払ったパコ(ハビエル・バルデム)の表情には、嬉しさより虚しさ、悔しさか。ラストは、これから第2幕が開くかのようだ。

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撮影現場のファルハディ監督。これで46歳!?

#35 画像はIMDbから