ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アマンダと僕」

190626 AMANDA 仏 107分 脚本・監督:ミヒャエル・アース(Mikhaël Hers、ヘンなスペリングの名前だが、1975年、パリ生まれのフランス人)

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仲良しのシングルマザーである姉、サンドリーヌ(オフェリア・コルプ)が、2015年、パリ近郊、ヴァンセンヌの森でイスラム系若者が引き起こしたテロ事件に巻き込まれ命を落とし、突然その7歳の一人娘アマンダ(イゾール・ミュリュトリエ)と暮らすことになったダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)はまだ24歳。細々と生計を立ててはいたが、まさかの一大事に途方にくれる。

頼れる親族もいないダヴィッド、いくら考えても他に方法がない。それでも待ったなしで、ぎこちない生活が始まる。それでなくても、母親を亡くしたばかりの年端もいかぬ娘をどう扱っていいか、それこそ腫れ物に触るようにして、日々が過ぎて行く。

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最愛の姉を亡くした弟、母親を亡くした一人娘と、たちばは違うが悲しみは共通する。やがてお互いにとってかけがえのない存在になっていく展開は、ほぼ想定内だが、パリの美しい街々を背景にして静かに描く手法もさることながら、演じる俳優、とりわけアマンダを演じる子役の自然な演技には恐れ入る。監督が見出したらしい。

やがて生活にも一定のリズムが出始め、アマンダも元気に。そして、亡き母が予約していたウィンブルドンセンターコートでの試合を二人で見に行くことに。

旅の目的はもう一つ。それはサンドリーヌとダヴィッドが子供の頃に離婚して今はロンドンに住む母(アマンダの祖母)、アリソン(グレタ・スカッキ)に会うこと。

ウィンブルドン決勝前後は一気に暑くなるロンドン、この日は快晴。母が座るはずだった席に自分の荷物をそっと置いて、試合に見入るアマンダ。

一方の選手が0-4と追い込まれると、突然涙滂沱。母サンドリーヌが亡くなる前日、アマンダに話してくれていたElvis has left the building(エルヴィスはもうこの建物にはいませんよ、とコンサートの後、いつまでも立ち去らないエルヴィスファンの群れを見たビルの管理人がアナウンスしたとされる話)を急に思い出し、辛くなったらしい。

でも、その後、負けている選手が盛り返し、ジュースに持ち込み、アマンダに笑顔が戻る。カメラがパンし、ウィンブルドン上空の青空を映し出す。

#37 画像はIMDbから。