ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「巴里祭」

190705 QUATORUZE JUILLET(7月14日)1933 仏 脚本・監督:ルネ・クレール(1898-1981 「巴里の屋根の下」'30, 「リラの門」'57)

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窓辺で思いに耽るアンナ(アナベル

巴里祭前日、パリのモンマルトル地区では、誰もがウキウキと準備に余念がない。と言っても、今では子供騙しのような大きな風船のような飾り付けや三色旗を窓の桟や枠にひもで結び程度のことだが、それが楽しくて仕方ない様子。そんな中で、1組の男女、ジャンとアンナがままごとのような恋を育もうとしている。

1933年(昭和8年)のパリ、ほとんどの人々はまだ貧しいが、第2次大戦まで後6年という微妙な時期でも、まだ平穏な日々を楽しむ余裕があるような印象を受ける。

ジャンはタクシーの運転手、アンナは花売り娘(?)、街へ出て前夜祭のダンスを楽しむことに。帰り道、急な雨にたたられ、雨宿り。愛を確かめ合う二人。だが、ジャンが部屋に戻ると、元カノのポーラが。焼けボックリに・・・で、怒ったアンナは他所へ。

ポーラはよからぬ仲間にジャンを引き入れ、ある日、アンナが雇われているカフェに押し入る。店の外で見張り役のジャンは、仲間がアンナを襲う場面に、我を忘れてアンナを救出、無事よりを戻すという、他愛もない、至極単純な展開だが可愛らしい作品。

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ジャンの運転するタクシーとアンナの押す花ぐるまがニアミスで大騒ぎに。

パリ市内でのロケはなく、すべてセットで撮影したそうだが、それにしては、坂の多いモンマルトルの感じがよく出ている。

何と言ってもアンナを演じるアナベラ(1907-96「北ホテル」'38)の純真な姿がいい。撮影時は26歳。それとモーリス・ジョベールの名曲、A PARIS, DANS CHAQUE FAUBOURが全編に流れ、素晴らしい雰囲気を醸し出している。 

因みにこの時代だと、「会議は踊る」('31独)、「キングコング」'33米、「伊豆の踊り子」'33日本」などが公開されている。本作は1933年1月フランスで上映開始、そして、その3ヶ月後には日本公開というのは驚きの速さだ。まだやっとトーキーが普及し始めた頃であり、カラー作品出現にはあと数年待たねばならない。

#39 画像はALLCINEMA ON LINEとIMBd、動画はYouTubeから。