ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「隣の影」

190731 UNDIR TRENU (英語ではUNDER TREE、確かに少し似ている。しかし、アイスランド語というのは、アイスランドでしか話されていない言語。ということは同国の人口30万人[世田谷区民の半分にも満たない]だけが話しているということに。ヴァイキングがもたらした言語ということで、ノールウェイ語に一番近いとされる)

f:id:grappatei:20190801103058p:plain

f:id:grappatei:20190801103123j:plain

ラテン系とは異なり、どちらかと言えば穏やかな人種で、静かに話し合う雰囲気というイメージが強いが、問題がこじれると、それだけに陰にこもって恐ろしい結果を招くことにもなりそう。本作のように。

映画のタイトルにもなっているが、隣家の大きな木が作る影で日光浴を妨げられるというのがコトの発端。特に仲がいい訳でもないが、まあ挨拶ぐらいはするお隣さん同士、特に亭主同士はおだやかで、その件も、じゃ今度、庭師を呼んで切らせるから、ぐらいの会話だったのだが。

女同士はそうは行かない。とりわけ年寄りのインガは、最近、次男のアトリがくだらないことで、女房のアグネスから家を追い出されて、一緒に住むようになっていることも気に入らないし、隣家のコウンラウズが若いエイビョルグを再婚相手に選んでイチャイチャしていることも気に入らないから、何かと隣家のことには口を出さずにいられない。さっそく嫌がらせ第1弾、ぜったいに我が家の木は切らせないと言い放つ。

両家にはそれぞれ家族並みに可愛がられている犬と猫がいる。エイビョルグがサイクリングの時にお供をさせているのはジャーマン・シェパードアスクル。そして隣のインガはいかにも高そうなペルシャ猫をこれみよがしに大事にしている。このペルシャ猫がある日姿を消したから大変。ここから陰湿極まりないインガの仕返しが仰天の結末へと・・・。

陰惨な事件の後、インガの庭を横切るペルシャ猫の姿が。そしてジ・エンド!

なにせ北緯65度という高緯度ゆえ、夏場はほぼ日が沈まない。この作品は夏の終わりという感じで、夕暮れは、それなりに薄暗くはなっている。家の作りはオシャレで、さすが北欧のセンスがあちこちに窺える。それだけに豊かな生活を庶民が謳歌していると単純に考えてはいけないようだ。一見おだやかに見えていても、人の心の中にしのびよる邪悪さ、憎しみと言ったものは人間が住む世界、いずこも同じなのかも知れない。

当事者の中で最も優しそうなバルドゥイン(インガのだんな、アトリの父親)が、家庭内の雰囲気が悪くなると男声4部合唱の練習に出かけるのだが、これが息抜きになっている。ただ、最後の練習シーンでは、周囲が大きく口を開ける中、ひとり真一文字に口を閉ざす姿が印象的。

ところで、出演者だが、インガはEdda Björgvinsdóttir、アトリはSteinþór Hróar Steinþórssonという、とてつもない名前で書く気にもなれない。アイスランド人には苗字がないようなもので、父親(母親の場合もあるらしい)のファーストネームに男子ならsson、女子ならsodottirをつける。「◯◯家の墓」という表示はあり得ないことになる。

#48 画像はIMBdから