ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

エウテルペ楽奏団第30回定期演奏会@練馬文化センター大ホール

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日舞台に乗る合唱団の一人から急なお誘いがあって、台風が近づく中、蒲田での地元合唱団の練習を終えて、練馬へ急行。練馬はさすがに遠い。

演目の中ではメンデルスゾーンカンタータ、「最初のヴァルプルギスの夜」に興味津々。普段それほど聞くことの多くない作曲家だけに、滅多にない機会だけに、楽しみも倍加。合唱とソリスト(それも珍しくソプラノ不在)の掛け合い演奏にもワクワク感が。

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キャリア20年のこのオケ、見事な響き。ホルンのうまさが際立っていた。橘 直貴は初めて聴くが、巧みな棒さばきで楽団員からの信頼も最強の印象。

幕間にマエストロトークとゲストとして榊ララという大学院生が登場、卒論にメンデルスゾーンのこの曲を取り上げたというから、余程のメンデルスゾーン狂と見た。いささか子供っぽいいでたちで登場したが、中身はなかなか立派で、解説振りも堂に入っており、場慣れしている感じがした。最後に、マエストロにこの曲に対する意気込みはいかがかと逆に質問するなどして会場の笑いを誘ったほど!

彼女の説明を聞いたからという訳ではないが、前奏の弦の響きの泡立つようなザワザワっとした感じがこれからいい曲を響かせるという予告のようにも聞こえた。

短期間でここまで持ってきた合唱団も素晴らしいと思ったが、ソリスト陣との対話が実に心地よく、配布された対訳を見ながら眠気も催さずしっかり最後まで聴いた。

ヴァルウルギスと言えば、まっさきにベルリオーズ幻想交響曲を思い出す。ドルイド(Druid)教を信奉するケルト族集団(古代フランスやイギリスにも存在)と対峙するキリスト教徒が登場する。狂宴する集団の騒ぎにキリスト教徒たちがおびえるところで終わる。

おどろおどろしい内容だが、曲そのものはむしろ淡々としていて、最後まで小気味好く自分の耳には響いていた。今日のソリスト陣、全員過去なんども聴いている。

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ソプラノ不在で、紅一点の向野由美子はベテランのメゾ。アルトという表示があるが、確かにこの曲では低音域がほとんどで、ちょっと向野には歌いづらかったのではと勝手に想像する。アンコールではバッハのマタイ受難曲からNr.47をコンマスの独奏バイオリンと共演。

土崎 譲は日声協の合唱団で何度か指導を受け、また吉田貴至主宰のA LA CARTEシリーズでも聴いているテノーレ・リリコ。籔内俊哉は、わが地元合唱団の定期演奏会でも客演してもらったことがあるが、最近では二期会本公演「魔弾の射手」のオットカール役を射止めるなど、進境著しい。

成田 眞には今年のヴェルレクでお世話になったが、深く沈んだ低音からハイ・バリトン領域までカバーする本格派バス・バリトン。アンコールでのメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」Nr.26でも本領をいかんなく発揮。

しめくくりのアンコールは、バッハのカンタータNr.147、「主よ、人の望みの喜びよ

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右端、土崎 譲、左へ向野由美子、籔内俊哉、成田 眞。籔内と成田の間に見えるのが独奏ヴァイオリン奏者、コンマスの酒井文章。

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舞台上で見た感じとは大違いの、まるで少女のようなマエストロ!

#59 文中敬称略