ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「パリに見出されたピアニスト」

190928 AU BOUT DES DOIGTS(指先で)、仏・ベルギー 105分 脚本・監督:リュドヴィク・ベルナール 

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天賦の才能はある、しかも子供の時からピアノは大好きである。あの人が近くにいたからだ。でも、シングルマザーに育てられ、妹と弟との4人暮らし、家計はいつも火の車。付き合うワルたちとバイクを乗り回し、とうとうかっぱらいまでやってしまい、追われる身に。

あの人から譲り受けた古いピアノはあるが、音がまともに出ないから練習はいつも駅に置かれている一台のヤマハ。でも、そんな人目に付くところだから、先日はポリ公に見つかり、得意の俊足で際どいところでかわしたが、もうここで弾くのはヤバイ。(今回は、下の方にネタバレがあるので、そのつもりで

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パリ近郊で団地暮らしのマチュー(ジュール・ベンシュトリ)は、偶然、駅のピアノで練習しているところをパリ音楽院の教授ピエール(ランベール・ウィルソン)に見られ、一度連絡するようにと半ば強引に名刺を渡される。音楽院に行く気はさらさらないし、だいいちそんな余裕がない。

警察に捕まったマチュー、この時とばかり名刺を利用。すると教授から音楽院での公益奉仕を条件に解放するよう手を回してくれ、合間を利用してピアノレッスンまで受けることに。それだけ親切にしてくれて破格の待遇を得ながらも、いつまでも心を開かないマチュー、それを辛抱強く説得する教授と、特別レッスンを授ける”女伯爵”の異名を取るピアノ教師(クリスティン・スコット=トーマス)。

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マチューの才能を信じるピエールは学院長を説得して来たるべきコンクールに彼に出場資格を与えることを主張するが・・・

うーん、美しいパリの街並みがきれいなショットで出てくる中での展開で、嬉しくないわけはないのだが、脚本がいかにも安っぽくて、なかなか感情移入ができない。もう少しリアルさを追求できてもよかった気がする。

そもそもマチューの描き方は悪ガキに徹してい過ぎて、あのような態度をとり続けていればどれだけ天才的であろうと、音楽院は受け入れがたいはず。しかも公益奉仕人として床磨きやらせていたのに、急に正規の学生扱いにすることも信じがたい。

さらにあの程度の練習量で、しかもあと本番まで一月というところで、急性腱鞘炎だから3週間は指を使うなと医者に止められる始末。方や、真面目にずーっと練習を続けていた本命学生がいるというだけでなく、当日、コンクールの出番に間に合わず、息を切らせて到着したマチューにそれでも強引に弾かせるのでは、コンクール自体を貶めているとしか思えない。

また、教授がわざわざ自宅の一部を彼に使わせてやるという、これまた破格の待遇をしているのに、そこに知り合ったばかりの黒人チェロ奏者の女性を連れ込むって!!そしてこの黒人チェロ奏者に弾き方、もうちょっろ練習させろや!ヴィブラートもかけてない弓使いって、素人が見たって不自然の極み。

監督は主役人選に苦労したらしい。最終的に、ジュール・ベンシュトリに決まったものの、ピアノの特訓が待っていて、連日長時間の練習をしたようだ。その辺は上手く撮影できていた。スコット=トーマスの方は、かなり手抜きしたのか、誤魔化し方が安易すぎる。

#60 画像はIMDbから