191020
すごいキャスティングだ!まさに両組とも綺羅、星のごとし!今回は3階席最前列中央という、コスパのいい席から観劇。オペラグラスを持って行ったから、視覚的にも十分満足。
昨日、低予算の公演を見たばっかりだったので、このカルメンの舞台のきらびやかさには目を奪われた。これは潤沢な予算で組まれた公演だから、まさに対照的。
今回の田尾下演出は、舞台設定が現代のニューヨークのショービジネスという、まあ言わば奇をてらったと言われても仕方のない演出・舞台設定である。これをフランス語でやって、さらに闘牛士などの扱いにも違和感があるし、自分にはやはりなじみにくく、本来の方式でやって欲しかった。
とは言うものの、よくうまくマフィアなどの登場する一種の裏社会の設定に出来たと、特に後半は感心して見ていたのも事実。この辺の才能は素晴らしいと思うが、カーテンコールでは一部ブーイングがあったのは、ま、仕方ないというか、こうした新演出の宿命だろう。
カルメン役のこのブルガリア人、ウーン、なんとも表現しにくい歌手!声や仕草は、やはり日本人にはないものを持っていることは認めるとしても、これぞカルメンという風には思えない、なんか違う感じが否めない。日本人共演者とのケミストリーが不発という印象だ。
ホゼの城宏憲、端正なマスクと声ですっかり売れているが、このカルメン役を相手にすると、気の毒なほど影が薄れて見え、聞こえるのは残念だった。多分、もっとアクの強いテノールの方が向いているのか。
そう言う意味では、エスカミリョの与那城 敬も同様で、端正すぎて、いささか物足りなく感じてしまった。だから、全体の調和を考えた舞台にするのはかくも微妙な難しさがあるということか。
そんな中で、ミカエラの嘉目真杞子は、うまくこの舞台に収まったと言えるのではないだろうか。
ところで、フラスキータとメルセデスだが、青木エマの演技には恐れ入った。日本人離れした手足の長さと高身長で、普段着ることのないような大胆な衣装を身につけていたので、これは彼女以外にやり手がいないような特異なキャスティングに映った。
対する富岡明子は、割りを食ったというか、もちろん定評ある歌唱は断然輝きを放っているが、フラスキータと同じ格好をさせられているのが、気の毒なように感じて、それが気になって、なかなか歌唱に没入できなかった。
モラレスの桝 貴志、久しぶりだ。関西ベースで活動しているから仕方ないが、以前は東京でもっと活躍していて、聞き惚れた逸材。スニガの大塚博章も申し分なし。
合唱団、子供達も生き生きとした演唱は聴衆を魅了し続けた。自分も今年はカルメンの合唱をやっていたので、大変懐かしく、いつの間にか心の中で唱和していた。
両サイドに縦に流れる日本語字幕とは別に、舞台上部に英語字幕が流れるのは初めての経験で、世界でも稀なる二か国語字幕!田尾下 哲が自ら製作したようである。凝り性なのか。
#64 文中敬称略