ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「トスカ」@日生劇場

191109

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今日は前から2列目なんで、オペラグラス不要かと思ったが念のために持って行った。顔の細かな表情などは、肉眼では見えないから、持参してセーカイだった。

堂々たるソリスト陣、圧巻だった。歌唱については、文句のつけようなし。しかも、演技のうまさが特に目立ったのが、砂川涼子黒田 博、とりわけトスカが最後にサンタンジェロのてっぺんから身を投げる場面、実に優雅に落ちて、ここは大ブラーヴァ!

欲を言えばきりがないが、雰囲気的にはイマイチかなというのは、お二人とも同じ。トスカというのは信心深い反面、嫉妬心が強い、見た目は優雅でも、案外図々しい女でもあるわけで、清楚で小柄な砂川涼子では、それが出しきれない気がする。

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スカルピア刺殺後、燭台を枕元に置くトスカ (日生劇場のサイトから)

スカルピアも同様で、世界級でもなかなかぴったりはまるバリトンは滅多にいないわけで、上品な黒田には、いささか酷な注文かも。いずれにしても”ないものねだり”なのだが、つい・・・。

カヴァラドッシの工藤和真、数ヶ月前のコンクールや、この公演のためのオードブルコンサートでも、若いのに、このうまさはどうだ、と感心したものだが、いざ舞台に上がってみると、これがちょっと違うのだ。まだ20代で、舞台経験が薄いから仕方ないし、今後の大化けに期待しよう。

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工藤にはいきなりの大役、少しばかり荷が重かったか。(日生劇場のサイトから)

幕が開いてびっくりだったのは、舞台装置の精緻さと紗幕の使い方の巧妙さ。NYCのメトも驚くほどのすばらしさ!!!アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会内部やファルネーゼ宮殿(確か?)内部の作り込み具合が半端ないのだが、加えて、上手側1/3ほどの空間が回舞台になっていて、これの使い方が絶妙!

さらに、紗幕を効果的に使用しているのにも感心しきりだった。ファルネーゼ宮殿内のスカルピアの執務室の壁にはイタリア全土の地図がかかっているのだが、カヴァラドッシを拷問する場面では、この地図の後ろ側に照明を当てて、拷問シーンがくっきり浮かび上がる。

また、ナポレオン軍勝利という知らせが入ると、前線の戦闘シーンが同じように紗幕を通して見える仕掛けになっていて、こうした演出は今回初めてお目にかかった。

つい先日、横浜方面で妙な演出のカルメンを見た後だけに、こうしたオーソドックスな舞台装置や演出には我が意を得たりという思いを強くした。

#73 文中敬称略