ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「マザーレス・ブルックリン」

200301 MOTHERLESS BROOKLYN 米 144分 製作(共)・脚本・監督・主演:エドワード・ノートン

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エドワード・ノートン出演作品は随分見ているが、彼がこれほどの才人ということは知らなかった。実話に基づいた原作(1990年代の設定)を、彼が1950年代に置き換えて脚本を起こしたもの。作中の人物の多くは実在のモデル。唯一、脇役ながら、重要な役柄の黒人女性は、ノートンお気に入りの黒人女優を念頭に彼が付け加えたと知った。

孤児だった自分を引き取ってくれた親も同然の私立探偵、フランク(ブルース・ウィリス)が追っていた事件の山場で、そのフランクを目の前で殺された主人公ライオネルエドワード・ノートン)は、驚異の記憶力を武器に、死の直前、フランクが発した言葉だけを頼りに事件の真相に迫ると、巨悪の張本人、都市計画監察官モーゼス(アレック・ボールドウィン)に浮かび上がる。

彼はこれまで橋や公園を無数に作って来た実績を誇るものの、その裏で犠牲者が累々であることには無関心どころか、さらにそれを強引に推し進めようと企む、ま、どこにもある、絵に描いたような利権構造にあぐらをかいて、甘い汁を吸い続ける巨悪の典型人物。(すっかり肥満したアレック・ボールドウィンがうまく演じている。)

事件を追い続ける過程で、知り合う黒人の人権運動家ローラ(ググ・ンバータ=ロー)、ジャズのライブハウスを経営するその父親、よく分からない監査官の弟(ウィレム・デフォー)などが登場する。ライブハウスの場面が秀逸で、マイルス・デイヴィスをモデルにしたバンドの演奏が心地よい。

ノートンの役は生まれつきのチック症という設定で、これは、思いもよらない言葉を突如口走るが、自分ではどうにも制御できないという厄介な病。置かれた状況で、さまざまな言葉を発するのだが、すばらしいタイミングで出ることも多く、そのことでライブハウスでは、演奏しているトランペッターから気に入られるという一幕も。

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ローラといる時だけ、深い安らぎを感じるライオネルだった。ラストシーン


事前に全米トゥーレット(チック症)協会へ仁義を切り、併せて、演じるための様々なヒントをそこで得たようだ。日本語訳がまた実に的確というのか、少し不謹慎ながら、さんざん笑わせられた。

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監督をしながら、主役を演じるっていかに大変か想像を絶する。(撮影風景)

それにしても、今の撮影機材ってーのは、コンピューターの塊のようだ。

#8 画像はIMDbから