2003 LES MISÉRABLE 2019 仏 104分 脚本・監督:ラジ・リ(マリ生まれ、アフリカ系フランス人 41歳)
凄い作品が出現!パリ近郊モンフェルメイユにある、荒れ果てた団地が舞台。住人は最低限の生活を強いられている、主としてアフリカ系移民たち。見るからに中も外も荒れに荒れ果てている。そういう環境でしか生きられない底辺の人々の苦しみ、悲しみ、怒りなどを余すところなくすくい上げて映画は作られている。実際にこの街で暮らしている人物が作り上げた作品だからこそだ。
既視感たっぷりなのは、パリ近郊にここ数十年の間にいくつか出現した団地が舞台になった作品は、すでにいくつか作られていて、多分その大部分は見ていると思う。しかし、本作ほど、鋭く細部まで抉り出した作品はこれまでなかった気がする。この監督だからこそ可能だった作品である。カンヌ映画祭審査員賞受賞作品。
住民、警察、宗教界の大物、地元顔役、それにサーカス一座まで加わって、画面は常に緊張している。終盤、警察側にとって想定外の事態に発展する。最後は暗転して終わるため、結果予測は見るものに任せるという手法を取っている。少年が手にしている火炎瓶は???
こののタイトルだが、舞台となったモンフェルメイユという土地は、ヴィクトル・ユゴーが不倫の罪で当時流刑地だったこの土地へ流され、ここで「レ・ミゼラブル」を書いたことに因む、と監督自身が話している。
エンディングで、「友よ、よく覚えておけ、悪い草も悪い人間もない、育てる者が悪いだけだ」というヴィクトル・ユゴーの言葉がぐっと印象に残る。
#12 画像はIMDbから。