ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

ME音@生配信

200901 本ブログでの最多登場回数である青栁素晴・江口二美夫妻による生配信コンサートも、これで3度目。(ME音としては2回目)映像・音響等技術的にもこの3ヶ月で随分進化の跡が見られたし、お二人とも、演唱もトークも、すっかり慣れた印象。目の前には本来、大勢の聴衆が手前から奥まで見える視界が、カメラと数人のスタッフだけというのは、やはりかなりやりにくいことは容易に想像できる。カメラ目線での演唱に慣れるのはいいが、早く本来の舞台に立たせてあげたいと切に願っている。

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このツーショット、二人ともすこぶる自然な表情で雰囲気を見事に捉えた、さすがプロの一枚!

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パソコン画面をスクリーンキャプチャー。

5月の第1回の配信の際は、初回のことゆえ、さまざま技術上のトラブルが発生し、そこを徹底的に修正して臨んだようだ。また今回はあえて実際の舞台と同じように15分の休憩時間を取って、これを含めて90分とした。休憩時間に別途収録しておいたトークで、裏話や今後のお二人の演奏計画などの告知を行なっていた。

前半は最近の作品や日本の歌、ミュージカルなど。後半には少し重めのオペラのアリアを中心に、再び彼らの愛唱歌など、ソロ、デュエットをうまく組みあわえて、さまざまな層のファンへの気配りを忘れないように構成されていた。

オペラファンの愚亭には青栁の歌った「フェデリーコの嘆き」(Il Lamento di Federico)と、江口が歌った「さようなら、ふるさとの家よ」(Ne andró lontana)の2曲がとりわけ印象深かった。

前者はフランチェスコ・チレア(Francesco Cilea, 1866-1950)の「アルルの女」(L'Arlesiana)、後者はアルフレード・カタラーニ(Alfredo Catalani, 1854-1893)の「ワリー」(Wally)からのそれぞれ名アリアであり、偶然にもこれら二つのオペラは全曲上演される機会が滅多になく、こうしたアリアだけが超有名であり、単独で歌われることが多い。確かにどちらも名曲である。

青栁が中島みゆきの作品を時折歌うのは知っていたが、若い頃から大好きで彼の愛唱歌にいくつか入っているらしい。そんなわけで、愚亭も大好きだったNHKのシリーズ「プロジェクトX」の最後に歌われていた「ヘッドライト・テールライト」を歌ってくれた。

次回のME音は12月19日とのこと。忘れないようにしないと。さて、その頃、コロナ禍が静まっていることを期待したいが・・・・。

(文中敬称略)

「ナルコス」@Netflix

200831 その後も映画館に行けない日々。ひたすらネット配信を見ている。そんな中で、またかなりの長編を堪能した。ナルコス(Narcos)とは麻薬密売人のことである。

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「ナルコス本編」シーズン1-3 全30話

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「ナルコス:メキシコ編」シーズン1-2 全20話

50話(約45時間)を観終わった。実際に起きた麻薬にまつわる国際犯罪を脚色してまとめたもの。本編(コロンビア編)はあまりにも悪名高きメデジン・カルテル(Medellin Cartel、1976年発足)を、その発端から描き、途中からメデジンから600km南を本拠地とするカリ・カルテル(Cali Cartel)との絡みが加わり、厚みがグッと増す。中心人物は実在のパブロ・エスコバル(Pablo Escobar)。これを演じるブラジル人俳優がいい味を出している。パブロののし上がり方には戦慄を覚えるほど。過激な殺人シーンも多く、女性向きではない。

DEA(Drug Enforcement Administration, 米麻薬捜取締局)との凄まじい駆け引き、殺し合いが延々と続き、最終的にDEAに仕留められてジ・エンド。

一方、メキシコ編は、文字通りメキシコに舞台を移し、ミゲル・アンヘル・フェリックス(Miguel Angel Felix)という、あまり悪役という感じのしない、どちらかと言うと優男を中心に、DEA、さらにCIA, 地元警察、政界(アメリカ、メキシコ)を盛大に巻き込んでの展開となる。

前記のパブロとは対照的に、先を読む力に抜きんでたインテリ風の主人公が淡々と、しかし強引にメキシコ各地に点在するプラザと称する地方麻薬組織を束ねて、ついにはコロンビア麻薬組織を手を組んで巨額の資金を手に入れようと企むが、惜しいところでチャンスを逸する。フェリックスを演じるディエゴ・ルナがまたほれぼれするようないい男で、つい彼を応援したくなる。

時折入るナレーションで、当時の時代背景がよくわかる仕掛けとなっているし、実写フィルムも巧妙に取り入れられ、こうした事情に疎い日本人にも事態が分かりやすく仕上がっていて、大いに楽しめる。

これまた50話と長いが、一つ一つ脚本がよく練られていて、まったく飽きることがなく観終わった。

最後のシーンは、ついに捕まった大ボスのフェリックスに会いに来た、追う側だったDEAのリーダーに対して、フェリックスは、今はおとなしくしている地方組織、プラザは遠からず内輪揉めを起こし、必ずや再びメキシコだけでなくアメリカも巻き込む壮大な麻薬戦争に発展すると自信たっぷりに嘯くところで「完」

画像はIMDbから

最近鑑賞した作品では、

200813 映画館に行けない(行けるけど、行かない)から、もっぱらNetflix、またはAmazon Primeで海外ドラマをひたすら見まくっているが、時折秀逸な作品に出くわす。「サバイバー:宿命の大統領」もその一つ。53話もあるから、だいたい45時間を要する長編だが、見どころ満載で、ほぼ飽きることなく見終わった。

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毎回、監督が替わるので、時につまらない話も混じるが、我慢。全体にはよくできているし、導入部の冴えは見事だった。主演のキーファー・サザーランドは、もちろん全編に登場、演技も悪くなかった。

ワシントンDCの議事堂が爆破され、議場内の議員がほぼ犠牲になるという幕開けのスリリングな描き方は、かなり引き込まれる。現役正副大統領始め全閣僚も死んでしまい、こういう事態を想定してDesignated survivor(指定生存者)をあらかじめ指名(複数の場合も)しておき、すかさず大統領に任命されるというシステムは知らなかった。

実は、裏に途方もない陰謀が、というのはまあ定番コースだが、53話もあるということは、魅力ある出演者が多数入り乱れて、毎回サイドストーリーを展開していかないともたない。現代のアメリカが抱える諸問題、話題を細大漏らさず取り込んでいて、例えばイラクと思しき国家への軍事介入などの国際紛争、BLMほか人種問題、LGBTQ、FBI,  CIA、パンデミック、などこれでもかというほどてんこ盛りで飽きさせない。

ほかのキャストでキーファーに次いで出番があったのはアジア系のマギー・Qというスリムな女優。FBI捜査官から、後半は過剰捜査でクビになると、すかさずCIAから声がかかって、大活躍の末に、VXガスの犠牲になるというやくどころ。

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⬆︎大統領を身近で支える首席補佐官、報道官などの側近たち。見事なチームワークで、2期目を目指し見事勝利するが、側近たちの一部とは溝ができ、やや後味の悪い終わり方で、さらに続編(シーズン4)がありそうだ。

以前見た、やはり合衆国大統領を描いた、ケビン・スペイシーロビン・ライト主演、全73話の「野望の階段」(HOUSE OF CARDS)に勝るとも劣らない出来栄え。

フェスサマ・ミューザもフィナーレ!

200810 家族からの冷ややかな視線を浴びながら、家を出る。これがまた一番暑い時間帯で、必死で陰を探しながら、蒲田まで歩く。今日は早いもので、もうフェスタの最終日。

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毎年最終日は必ず聞きに行くことにしていて、いつもだとマエストロ秋山の登場となるところだが、今年は原田慶太楼、今、最も気鋭のマエストロの一人。

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今日の席は1階センターブロック7列29番。ご覧のように前列は5列まで黒い覆いが。

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シェラザードの他は普段聞く機会がないので、じっくり解説に目を通すことが大事。

ショスタコの祝典は上にあるようにアッという間に作っちゃったらしいけど、やはり天才!最後の方にはパイプオルガン前にバンダが登場、左からホルン4、トランペット3、トロンボーン3という編成。徹頭徹尾賑やかな作品で、スカッとした。

2番目はこれもまず聞くことのないハープのコンチェルト!普段、近くで見ることのないハープの妙義をたっぷりと鑑賞。細かい手技、足技をとっくりと堪能。ペダル操作がこれほど激しいものと初めて知った。

後半はフェスタの締めとなる曲。この曲は咽び泣くようなヴィオリンの旋律が何度も登場することでもよく知られているが、それ以外の楽器も満遍なくソロが組み込まれていて、演奏側はかなり苦労するだろう。でも、張り切り甲斐もあるというもの。フルート、オーボエクラリネット木管トライアングルを構成するプレイヤーはすべて女子!

女子ではなかったがファゴットも登場回数ははんぱない。金管、打楽器も特に終盤は総動員で盛大かつ壮大にコロナ禍でのこのフェスサマ・ミューザ・シリーズを締めくくってくれて、場内の喝采、なりやまず。最後は自分も含めてスタンディング・オヴェーション。誰もいなくなった舞台に、いつの間にマエストロ原田が戻り、今日大活躍のコンマス、水谷くんと、ハーピストの影山嬢を手招きして、熱狂のうちに終幕。

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演奏曲目についての慶太楼メモ。

このマエストロは、珍しく米国派とでもいおうか、アメリカで研鑽を積んでいて、そのせいか風貌、仕草、服装なども含めて全体的にアメリカ風の空気を纏っている異色の存在。トークのノリもいかにも現代風で、マエストロ秋山とは対極に位置するような印象を受ける。

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ハープという楽器を8歳から始めたという景山さん、普段あまり目立たない存在だが、今日は躍動の限りを尽くした。それにしてもこの楽器の持つきやびやかで古典的な姿はどうだろう。細かい装飾と、まばゆいばかいの金色だからねぇ、どうしてもいかつい男よりみやびな女性に弾いてほしい楽器だ。

ところで、先日の群響では、団員全員マスクをつけていなかったが、今日は管楽器以外は全員マスク、それも団からの支給品か、全員同じグレーのマスク。ただし、コンマスとマエストロはマスクなし。

会場を見渡すと、なぜか今日は黒は皆無。ほぼ全員白か薄いブルーがちらほら。クラシック愛好家って、かなり保守的という印象。

#14 文中敬称略

恒例、小学館アカデミー絵画倶楽部作品展@銀座へ

200807 半年ぶりに銀座へ。都営浅草線利用したのも3月以来。

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兄が所属する団体の毎年恒例の作品展。本来は3月開催予定だったものが延期されたもの。主催者も8月ならば、と思ったのだろうが、コロナめはそんなヤワではなかった。

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来場者もこのぐらいの感じで、これなら密にはなり得ない。

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スタンバイする講師の先生方


密を避けるため、いつもは会場で講師たちによる講評が行われるものが、今回に限り「講評コメント集」と言う形で会場で配布されていた。文章になると、やはりストレートな表現を避ける傾向があるから、どうしても褒め言葉の羅列となってしまうのはやむを得まい。また、実際の講評では、作者と講師との間で若干のやりとりがあって、もう少し講師の本音を探れ、改善点を見出しうるものだが、ま、そこは天下の情勢では諦めるしかない。

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という解説の通り。少年時代から航空機と共に歩んできた兄の画題はほとんどが航空機。講評は一応以下のようにやはりかなり好意的な内容だ。

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ただ、途中から聞いたその場の講評(本人が講師の一人であるすずきくみこ先生を連れてきて頼んだもの)によると、人物の描き方、特に奥の人物の服装の色はもう少し暗めにすることで奥にいることをより表現できる。また黒の使い方について、真っ黒をべたっと塗るのはやめて、奥行き感、立体感を出すには、他の色を混ぜて濃淡をつけるのがおすすめ、とのことだった。

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講評をしてくれたすずきくみこ先生の作品がこれ。女性らしい淡い色の組み合わせの妙!

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「私の東海道五十三次 四日市金川暁枝

⬆︎ひどく関心を引いた作品。⬇︎こちらが歌川広重の原画

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講評では、「テーマが大変面白い。浮世絵をパロディ化し、現代の風景をミックスした構想、あっぱれです。元の浮世絵に限りなく近い表現に描き手の観察眼の鋭さと技術の深さも垣間見れます。」確かに見事な発想力と描きっぷりには脱帽!

1時間ほど鑑賞して、本来であれば、鑑賞以上のお楽しみ、会食が待っているところだが、年寄りばかりでの会食は最も危険でもあり、また千葉から来ている姉はなんとしてもラッシュ時間帯を避けたいということで、4時には解散となった。最後に毎回恒例の作品前での集合写真。

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マスクの下はすっぴんという姉に付き合って、愚亭もマスクのまま。

画像の一部は小学館アカデミーのものをお借りしました。