ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「MERU/メルー」

201119 MERU 

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まったく知識も情報もなかったが、この山はインド北部にある、結構難攻不落の高峰。これは初登頂に成功した3人が残したドキュメンタリーフィルム。登山家が自分たちで撮影しているところがすごい。しかも映像がものすごくシャープで驚く。それもそのはず、中心人物のジミー・チンはあのナショ・ジオの山岳写真家でもあるということだから、無理もない。

2008年、最初のトライでは悪天候でテントに4日間も閉じ込められ、食料が尽きたことで、登頂までほんのわずかなところで、撤収せざるを得ず。それぞれに再起を期していたが、ジミーが雪崩に遭って奇跡の生還を果たすと、次はレナン・オズタークがスキーで崖から転落、頭部、脊椎に大怪我で再起不能と医者から見放されていたのが、これまた奇跡的に復活し、ついに2011年に中央峰シャークス・フィン・ルートによる世界初登頂を果たすことに。

こうした山岳映画を見るたびに思うが、なんでこんなしんどい思いをして人は登山に夢中になるのか、やらないもにはサッパリ!

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こんなとこ、登るなんて、正気の沙汰には見えない。

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苦労に対するご褒美がこうした息を呑む光景なのはわかるが・・・

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ヒマラヤの高峰はほとんどがネパール領にあるが、インドにもこんな凄い山があること、初めて知った次第。それにしてもMeruとは、素敵な名前だ!

「英雄の証明」

201117 CORIOLANUS 2012 英 監督:レイフ・ファインズ

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映画の中ではコリオレイヌスと発音しているが、ラテン語の原題はコリオラーヌスだろう。ちなみにイタリア語では、コリオラーノ。ベートーベンが作曲したのは序曲「コリオラン」。古代ローマ(紀元前550年頃)の将軍。

シェイクピアの戯曲を現代に置き換えた、自身シェイクスピア俳優で、舞台でこれを演じたことのあるレイフ・ファインズの初監督作品。そして自ら主役を演じている。撮影はセルビアで行われたらしいが、内容は古代ローマであるから、当然しっくりこない場面が出てくるが、なかなか意欲的な試みだ。

それにしても、うなく現代化したものだ。台詞回しは戯曲のままのようだ。(原作は読んだことがないし、舞台も見たことがないから論評資格なし)

さすがシェイクピア俳優ならではの格調高いリズムを刻むセリフ回しには感嘆あるのみ。さらに、これまた舞台俳優でもあるヴァネッサ・レッドグレイブ(83)の存在感は、ファインズに勝るとも劣らない。180cmの長身であることも加わって実に堂々たる雰囲気。コリオランの妻役にはジェシカ・チャステイン。出番は多くないが、本作で注目され、後「ゼロ・ダーク・サーティ」の主役に抜擢されたそうだ。

宿敵オーフィディウス(ジェラルド・バトラー)とその取り巻きらによって、ラストシーンで切り刻まれるが、さながらブルータスに刺し殺されるシーザーを見るがごとし。

それにしても、この邦題、どうにかならなかったものか。

 

「クリミナル 2人の記憶を持つ男」

201116 CRIMINAL 米・英・ブルガリア合作 監督:アリエル・ヴローメン

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内容的にはB級作品かと思えるが、キャスト陣が結構豪華。もっともライアン・レイノルズは開巻から10分ほどで死んじゃうけどね。死んだこのCIA捜査官の記憶を特殊な装置で凶悪犯の頭脳に移植して秘密を探り出そうという奇天烈なストーリーがロンドンを舞台に繰り広げられるというサスペンス・アクション。

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そこそこ見せ場は用意されていて、最後まで飽きることはなかったが、全体としてはやや平板かも。

ワンダーウーマン」をやったイスラエル出身大型女優、ガル・ガドットさん、今回もなかなか颯爽とした活躍を見せる。

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撮影当時、まだ70歳のトミー・リー・ジョーンズ、そのジャガイモみたいなご面相にはいっそう深い皺が刻まれ、全体にかなり縮んだ印象。まあ、しかしその存在感はますます健在。そこへいくと、トミーより10歳ほど若いケビン・コスナーはまだまだ若々しいし、身体のキレもしっかりしている。

他人の記憶を移植するなんてことは、多分将来的にも可能になるとは思えないが、発想そのものは痛快。

それにしてもクリミナルというシンプルなタイトルの映画やドラマが多すぎて、本作のように副題をつけないと、なかなか探せない。

音楽ビラプラザ銀座ライオン閉幕!

201115 閉館が近づくに連れ、ほぼ連日の生配信があったが、いよいよ当日となり、5時から4時間ぶっ通しの生配信で、出演者、ファンともども32年の歴史に別れを惜しんだ。

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延べ人数はおそらく1,000人は軽く超えているように感じるほど、多彩な顔ぶれが登場していた。

ここで技を磨いたり、ファンを増やした歌い手は数知れず、それだけに貴重な存在だったはず。ゲルマニア、トナカイと閉店に追い込まれ、オペラ歌手たちにとっては辛い現状だ。翳りが見え始めているところにコロナが追い討ちをかけることになったから、この種の小屋はたまらない。

日本の唱歌に始まり、オペラまであらゆるジャンルを全員が歌い踊った4時間。多分、配信終了後も熱気はさらに高まったのではないかな。25分の休憩が2回、その間、昔の動画を流していたが、これがまたどれも大変貴重な映像と音源である。書き込みを見ていると、どういう歌手たちが分かるような場面も少なくなかった。

愚亭は、そんな昔から行っていたわけではないから、初期のメンバーには知らない顔ぶれの方が多いが、そんなことは関係なく、往時をたっぷりと忍んだ次第。

3部に入ると、途中から駆けつけてきた顔もいくつも加わり、収容しきれないほどの盛況。ビールと見まごうお茶がジョッキで登場、場内の熱気は最高潮。惜しんでも惜しみきれない別れがそこに。32年間、ありがとう!!!

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加古 隆の「映像の世紀」から「パリは燃えているか」が流れる中、フィナーレの記念撮影。パソコン画面をキャプチャーしているから、映像が粗い。

 

「これが私の人生設計」

201114 SCUSATE SE ESISTO (ごめんなさいね、私がここにいて)伊 2016 監督:リッカルド・ミラーニ 脚本・主演:パオラ・コルテッレージ(監督ミラーニの奥さん)

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いくらイタリア映画好きでも、最近の作品のキャスト・スタッフはほとんど知らない。左の男優、ラウル・ボヴァ、国内ではかなりの人気者らしい。元競泳選手、181cm、監督業も始めている。現在49歳。

世界を股にかけて、設計・建築技師として活躍してきたセレーナ(パオラ・コレテッレージ)、急に故郷のイタリアが恋しくなり、帰国することに。ところが、想像以上に男性社会であることを思い知らされ、これまでのような活躍の舞台がなくなってしまう。

ならばと一計を案じ、バイト先の社長、フランチェスコを自分の代役に頼み込んでコンペに応募、打ち合わせた通り、リモートで発注元に対し、コンペ審査でプレゼンをするが思わぬ手違いで・・・

典型的なイタリア製ドタバタ喜劇であり、愚亭はそれなりに楽しめたが、あまりお勧めではない。

この作品、2015年春のイタリア映画祭出品作で、一般公開は翌年となった。まったく注目していなかったが、多分封切り後、早々と公開打ち切りになったと思われる。

ちなみに、映画祭での邦題は「生きていてすみません!」だが、これは誤訳。「私が存在していてごめんなさい」と訳せるが、映画のワンシーン、ゲイ同士が会話している真ん中にセレーナが偶然いあわせてしまい、邪魔になる位置関係から、「あら、ごめんなさい、こんなところにいて」という感じ。どちらにしてもヘンなタイトルである。平凡だけど、公開時の邦題の方がまだマシだ。