ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アンビュランス」@Amazon Prime

230125 AMBULANCE 2022 米 2h16m 監督:マイケル・ベイ

トランスフォーマー」や「ジャック・ライアン」シリーズの監督が撮ったノンストップ・カー・クライム・アクション。手に汗握る2時間越え!ドローン撮影を多用したカメラ・アングル、カメラワークが冴える。

アフガン戦争帰りの英雄ウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)が妻の手術に保険が効かないか当局に問い合わせるも埒が開かず、ついに手術費3,000万円を用立ててもらえないか、義兄弟(ウィルは養子)であるダニー(ジェイク・ギレンホール)のところへ。このダニーってえのが悪でして、手下を連れて、途方もない額を銀行強盗で荒稼ぎしようと、ちょうど準備の真っ最中。

心ならずも、ダニーと行動を共にすることになってしまったウィル、簡単に終わると思ったらとんでもない大事件に発展。逃走中に偶然カージャックした救急車には、ウィルに撃たれて負傷した警官と救急士キャム(エイサ・ゴンサレス)が。

L.A.中のパトカーが集まったかと思うほど大規模なカーチェイスとなり、しかもヘリまで加わっての大捕り物!これだけで2時間超えとなるのですが、退屈なシーンはゼロ。そこがこの監督のすごいところでしょうかね。

あり得ないと思えるシーンの連続ではありますが、娯楽作品としては大成功であります。主人公はダニーとウィルのシャープ兄弟ではなく、最後までかっこよかった救急士のキャムでしょう。

ただねぇ、瀕死の警官に対して、猛スピードで疾走するアンビュランスの中で、ゴルフプレイ中の同僚専門医とスマホで回線を結んで、経験したことのない手術を成功させるってえのは、あまりに荒唐無稽で、笑っちゃいます。リアリティ、なさ過ぎでしょう。

「ジェントルメン」@Amazon Prime

230123 THE GENTLEMEN 英・米 2019  1h53m 原案・脚本・監督:ガイ・リッチー

舞台はイギリス。麻薬で大儲けしたアメリカ人が、儲けるだけ儲けたからと500億円で誰かに事業を譲渡して引退することに。噂を聞きつけたワルたちが群がって、騙し騙され・・・ってなお話。けっこう痛快です。

ガイ・リッチーの作品という以外に、キャスティングに惹かれました。マシュー・マコノヒー以外はすべてイギリス人、英国訛りに時折米語が混じるという感じ、これも面白かったです。

コリン・ファレルヒュー・グラントのビッグネームに並んで、ダウントンアビーの伯爵令嬢、ミシェル・ドッカリーが、まあ、あまり大した役ではなかったのですが、マコノヒーの連れ合いで出ていて、これも愚亭には見どころの一つでした。オススメ!

Ginza de Opera

230121 ミューザ川崎で「魔笛」を見た後、急いで銀座へ。「トスカ」の開演は2時なので、ちょっと慌しかったですが、京急で川崎から東銀座まで直行で、割と楽に行けました。演奏形式はどうあれ、午前、午後でオペラを立て続けに見た記憶がありません。

地元の合唱団の指導者でもあるピアニストが出演するというので、団からは大挙20名近くが王子ホールへ繰り出しました。銀座のど真ん中で正統派オペラがこの値段に見られるとあれば、まあ当然の反応でしょうか。

途中、15分の休憩時間を2回挟んで3時間近くかかりました。後で知ったのですが、メインキャストはあいさつにロビーへ出てきたとか。最近はコロナの影響でそうしたことは一切ないので、さっさと帰ってしまい、惜しいことをしました。こういう情報は事前に欲しいものです。

さて、なんと言っても特筆すべきはカヴァラドッシを演じたニコラ・ロッシ・ジョルダーノさんでしょう。こんなまさに国際級の本格派テノールが日本にいたとは!!第一声聴いた瞬間に、電撃に打たれたかのごとく圧倒されました。こんな声を聴いたのはいつ以来か思い出せません。もしかしたら、2019年秋のヴィットリオ・グリゴーロ以来かな?この人の圧倒的な声量は、この規模のホールではもったいない!「星は光りぬ」では、我を忘れてBravoを絶叫していました。

そして意外だったのが与那城 敬さん!この方、見るからに超真面目人間風で、顔立ちもお声も品格のある感じゆえ、超悪役スカルピアには向かないだろうと思い込んでました。そうしたら、風貌から変えて出てきました。髪をオールバックにして、目一杯悪役ヅラでねぇ。いやぁ、やるもんです。もちろん、発声もそれに合わせて実に憎々しい歌いっぷりで、プロ根性をまざまざ見せつけられました。素晴らしい!

そして伴奏陣、ピアノ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、とスネアドラム。これだけですが、存分に雰囲気を盛り上げるのには成功していたと思います。Bravi!

小ホールで、しかも低予算ですから、舞台は簡素でしたが、ここで活躍したのがプロジェクション・マッピング!第1幕のサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会内部、第2幕、警視総監スカルピアの書斎兼居間、第3幕、聖天使城のてっぺん(ペストを収束させたとして大天使ミカエルが剣を鞘に収めようとする巨大な大理石像がある)、いずれも見事に雰囲気を出していて、その威力を目の当たりにしました。それにしてもこの映像投影技術の進歩には目を見張ります。第2幕、遠くヴァチカンのサン・ピエトロ大寺院を臨む大きな窓の開閉まで映すのですからねぇ。

忘れ難き公演でした。またチャンスがあれば、このニコラさん、ぜひ聴いてみたいと思いました。

「魔笛」@ミューザ川崎

230121 モーツァルト・マチネ シリーズ。ということで、週末の午前中の公演で、所要時間わずかに70分。それでいて魔笛をやろうっていうんですから、無謀というか・・・。でも、結果は、大成功でしょう。

構成がしっかりしている上に出演者がいずれも素晴らしい!よくぞここまで揃えたものと感心します。したがって、こんな開演時間でもほぼ満席でした。相変わらず宮本益光さんが演出、ナレーション、日本語字幕翻訳と、本業(?)以外で、ここでも大活躍!

それに応えて、歌手たちもがんばりました。以前からよく生で聴かせていただいている方々ばかりですが、タミーノの澤原さんは久しぶりでした。先日の小野弘晴さんじゃないけど、しばらく聴く機会がなかった間に、著しい進化をされていました。以前よりしっかりしたお声になっていました。パミーナの嘉目さんは今更ですから、あえて触れません。近藤さん、鵜木さんも同様。

夜女の針生さん、ずいぶん昔から聴いていますし、お上手なことは承知していて、今回も楽しみにしていたのですが・・・ちょっと体調がよくなかったのか、本調子ではなかったことが悔やまれます。

舞台を盛り上げる趣向の一つとして、マエストロを始め、オケの楽団員をかなり歌手たちの動きの中に巻き込んでいたのも愉快でした。こういうのは、もっとどんどんやったらいいと思いました。やらされる楽団員は多少負担増かも知れませんが。

他に衣装が上質でした。パパゲーノの衣装や夜女の衣装は実によく作られており、見栄えがすばらしかった!ついでに、パパゲーノの吹く笛、最近のは音もきれいだし、見るからにスタイリッシュに作ってあることに気づきました。

今回のプログラム、プログラムノートに英訳が付されていました。聴衆に外国人が増えたことを意識してのことでしょうけど、今後もこの方式にするのか、興味あります。

 

「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」@Amazon Prime

230120 MOZART IN THE JUNGLE 米 4シーズン、各10話、ただし、1話が30分を切るので見やすい。

ニューヨーク・フィルに新任のマエストロ、ロドリーゴガエル・ガルシーア・ベルナル)が着任したが、彼の型破りの手法に戸惑う団員、前任のトーマス(マルコム・マクダウェル)も心配のあまり、色々アドバイスしたり・・・経営者側と楽団員の争議やら、演奏旅行(ヴェニスや東京)などのシーンも描かれ、クラシック・ファンにはかなり面白い出来栄え。

またゲスト出演者が多彩で、これが楽しい!今や世界的な指揮者になったヴェネズエラのグスターヴォ・ドゥダメルが舞台監督のちょい役で登場したり、ヴェニス編ではあのモニカ・ベルッチさん(58)が3話にわたって登場、なんと裸身までさらす大サービス(しかしあれだけの美貌と肉体美の持ち主も老いには勝てない哀しさ)。

同じヴェニス編には伝説のオペラ歌手に扮するモニカさんの相手役で、なんとサプライズでプラシド・ドミンゴまで登場するという出血大サービス!!参りました。

サン・マルコ広場の特設ステージで歌う伝説の歌姫(モニカ・ベルッチ

シーズン4では、舞台が東京に。加瀬亮を始め、原田美枝子藤谷文子などなど、お馴染みの顔が登場。撮影はどうやら盛夏らしく、撮影中、かなり暑そうに見えて気の毒。特に主人公ヘイリー・ラトリッジ(ローラ・カーク)が指揮する場面など、顔や背中がじっとり汗ばむ様子が。それに水蒸気が見えるほど、それまでの映像とは明らかに違う空気感が楽しめる。

ほかに渋谷、新宿でのロケシーン、2人の主人公が茶湯に招かれる場面など、うまく撮影されていて感心する。ちなみに神社の前での演奏場面は渋谷の金王八幡で撮影されたようです。

この東京編を除くと終盤、かなりだれるシーンが増え、また最終章がなんともあっけなく、ちょっと寂しいというか、もったいない。あるいは、さらに続編が作られるのかも知れません。

主人公を務めたローラ・カークという女優はまったく知りません。最初の方はあまり馴染めなかったのですが、徐々に目が慣れるに従って、結構魅力に満ちた女優と思うようになりました。それにしても撮影前に特訓したと言われるオーボエの演奏、ある程度は吹けるようですが、音源はやはりプロが演奏したらしいです。

メキシカンのガエル・ガルシーア・ベナマル、そもそも出世作であるモーターサイクル・ダイアリー(2004)以来、ずーっと注目していた俳優で、本作の風変わりな天才指揮者を実に軽妙に演じ切っていました。

それと、オーケストラの経営側の代表、グロリアを演じたバーナデット・ピーターズが素晴らしかったのです。74歳とは到底思えないヴァイタリティあふれるコケットぶりには驚嘆するしかないです。

この人、我々日本人にはあまり馴染みがないですが、アメリカでは知らない人がいないほどの女優・歌手です。ゴールデン・グローブ主演女優賞を取っていますが、エミー賞を含め、数えきれないほどのノミネートを受けているというほど。

本作でも2度ほどさらっと歌っていますが、さすがです。東京編では、急に舞台に上がって昔ナンシー・シナトラが歌ってヒットした「にくい貴方」(THESE BOOTS MADE FOR WALKING)を歌っています。

とても楽しめた作品で、終わってちょっぴりロスを味わっています。