ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

ラフェエル前派展@森アーツセンター・ギャラリー

140325

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イギリスのこの一派の展覧会、確か以前にも開催されたことがり、何度かお目にかかった作品も少なかった。ただ、これほどこの一派だけ、それもほとんど油彩画をまとめて展示しているこの展覧会はそれなりに意義がありそう。

ホームページでの解説には、

19世紀半ば、英国のアカデミズムに反発した若き芸術家たちによる「ラファエル前派」運動とその発展を、英国を代表するテート美術館所蔵の名画72点で紹介する美術展。

1984年にテート美術館で決定版の展覧会が開催されて以降、研究を通じて意義や位置付けが大きく変わったラファエル前派が、英国、ひいてはヨーロッパの美術史に及ぼした影響を再検証し、展覧する。ロンドン、ワシントン、モスクワ、そして東京で開催される、決定版の展覧会。彼らは盛期ルネサンス巨匠ラファエロを規範としてその形式だけを踏襲する当時のアカデミズムに反発し、ラファエロ以前の率直で誠実な初期ルネサンス絵画を理想としてこのグループ名を付けた。

彼らの作品は、具体的にはどういった絵画だったのかー彼らは自然をありのままに見つめ、その姿を正確に写しだそうとして、戸外での制作を試みたり、くっきりした明るい色彩を使用し細部を描き込んだりして、リアリズムに徹した画面を作り上げた
当初、そのような姿勢や絵画は社会から猛反発を受け、一種のスキャンダルになったが、美術評論家ジョン・ラスキンの援護もあり、しだいに受容されていった。本展では、ラファエル前派を英国の近代美術に新たな道を切り開いたアヴァンギャルド運動としてご紹介。

とあるが、やはり少々分かりにくい。そもそも英国のアカデミズムに反発とあるが、自分たちも英国ロイヤル・アカデミー所属の画家であることの整合性。実際、ラファエル前と後とで、そんなに技法やテーマが変わったかと言うと、必ずしもそう言えないのでは。それに、当時、そうした戸外で自然を正確に映し出す手法が反発を招いただけでなく、スキャンダルにまでなった?何故?絵画の世界でも、それまでの伝統的な流れに反発するヴェクトルは必ず存在するし、台頭することは、印象派にも言えることで、珍しいことではない。

ともあれ、むしろ分かり易い絵画という点では好感を持たれる流派ではないか。

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ラファエル前派の代表作はこれだろう。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの「プロセルピナ」

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これまた絶大な人気作。ジョン・エヴェレット・ミレイ「オフィーリア」何たって水面の下の草花の描き方の巧みさよ。

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ウィリアム・ホルマン・ハント 「良心の目覚め」

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本展で最大の作品。エドワード・バーン=ジョーンズ 「愛に導かれる巡礼」

72点ということだが、全体に小品が多かったが、しかし、どれも緻密に微細に描かれていて、じっくり鑑賞する価値の高いものばかり。

同時期に開催されている三菱一号館美術館の「ザ・ビューティフル」に比べて、こちらの展覧会の方が断然見応えがすると感じたが。