ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「少女は自転車にのって」

140404 原題:Wadjda(ワジダ、主人公である女の子の名前)サウジアラビア 97分

初めてサウジの映画を見た。それも女流監督が撮ったというからえらいこった。そもそもサウジには映画館が存在しないらしい。[監督・脚本]ハイファ・アル=マンスール

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数あるイスラム国家の中で、最も厳しい戒律を国民に求める原理主義の国ゆえ、女性の社会進出など、夢のまた夢、女性は家の中に引きこもっていればよいという世界だ。当然、運転免許など発行されないし、ヘジャブなしで街を歩くこと等、あり得ないという。

 

そんな厳格なイスラム主義国家でも、インターネットの流れに抗することは難しいと見え、最近は事情が少~しずつ変わって来ているらしいし、そんな現れの一つがこの作品なのかも知れない。

 

この作品は、全編サウジ国内で撮影された最初の作品で、米国アカデミー賞外国語作品部門に出品されている。女流監督ゆえ、車中から、モニターを見ながらウォーキー・トーキーで男性スタッフに指示を出して撮影したというから、いかに多難な撮影だったかが分かろうと言うもの。

 

映画は、負けず嫌いでおてんばの女子中(小?)学生ワジダが、自転車に乗りたい一心で、好きでもないコーランの暗誦大会に挑戦し、見事優勝するものの、賞金1000リアルは、保守的で頑固一徹の校長の一言でパレスティナ難民支援金に回されてしまい・・・でも、最後は真新しい自転車で颯爽とリアドの街を走り抜ける姿を描く。

 

ワジダは母親と二人暮らし。時折、父親が現れるものの、すぐまたどこかへ出かけてしまう。そう一夫多妻国家だからねぇ~。この母親、イラン人TVタレントのサヘル・ローズそっくりの顔で、しかもまことに豊満。色気たっぷりだが、亭主はアチコチ飛び回って家に寄り付かない。

 

しかし、サウジではどこにでもある日常的なことらしく、ワジダも余りそのことを気にしている風でもないし、屈託がなく母親思いのとてもいい娘(こ)である。恐らく本人自身、良家の子女らしく、どことなく気品がある。演技は上手いとは言えないが、映画製作の歴史のない国で、ここまで作り込めるのは大したものである。

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エンディングでは、彼女が自転車で走って行く先には海が広がり、広大で明るい未来を示している感じがする。亭主は去って行ったが、女の子が自転車なんかに乗るもんじゃないと、あれほどうるさく言っていた母が、娘のために真新しい自転車を密かに購入、それをさりげなく娘に見せるシーンには、さすがにジーンとなる。

 

 

#29 画像はALLCINEMA on lineから