ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」

140530 原題:Inside Llewyn Davis 米 105分 脚本,監督とも、ジョエル、イーサンのコーエン兄弟。主演のグァテマラ人、オスカー・アイザック(フロリダ在住)は措くとして、なかなか豪華な顔ぶれだ。キャリー・マリガン(「私を離さないで」、「華麗なるギャッツビー」)、ジョン・グッドマン(「アルゴ」、「人生の特等席」)、ギャレット・ヘドランド(「オン・ザ・ロード」)、ジャスティン・ティンバーレイク(「ソーシャル・ネットワーク」、「人生の特等席」)など。それに端役で、あのF・マーレイ・エイブラハムが。

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才能には恵まれているのに、歌以外にはまるで無頓着、心優しいのに不器用。なにをやらせても、まともにこなせない。それに頑固で、運にまで見放されてしまっては、それでもがんばって生きて行くのは並大抵の神経ではない。こんな主人公をオスカー・アイザックが見事に演じている。

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ジャスティン・ティンバーレイクグラミー賞エミー賞何度か受賞している大物)と二重唱を楽しむオスカー・アイザック。ティンバーレイクが女優ジェシカ・ビールズの亭主とは知らなんだ!)

1960年代初頭のニューヨーク、フォークのシンガー・ソングライター、ルーウィン・デイヴィス(LlewynのLが二つ重なるのは、ウェールズ出身という説明)は住む家もなく、友人や兄弟たちのところを転々としている。ドゥオの相手を自殺で失って以来、失意のどん底。たまたま一夜を共にした歌仲間の一人ジーン(マリガン)から妊娠したから中絶費を払えと迫られたりと散々。

それでも、昔仲間で、小さなライブハウス経営者から時折出演依頼があったりするのだが、他の仲間とうまく振る舞えない自分に腹を立てたりする。ひょっとしてチャンスをつかめるかと、シカゴにいる大物プロデューサー(エイブラハム)にはるばるヒッチハイク同然で会いに行ったりもするがうまく行かない。

そうこうするうちに、いよいよ生活費に窮して、昔やっていた船員生活に一時的に戻ろうとするが、船員免許を他のゴミと一緒に姉に捨てられてしまったり、踏んだり蹴ったり、自棄のやん八(やけのやんぱち)だ。

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映画は、オスカー・アイザック自身の、味わい深い演奏を織り交ぜながら淡々と描き出す。一宿一飯の恩義ある友人宅を出る際に、ついてきてしまった虎猫を抱きながら、ニューヨークの街を往来する姿が、独特の哀愁を奏でる。そして、フォーク全盛のあの時代の雰囲気をたっぷり感じることが出来る。(前に座っていたおばあちゃん、ずーっとノリノリで身体を揺すっていた)

#45 画像はALLCINEMA on lineから