ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」

140723 原題:THE DEVIL’S VIOLINIST 独・伊合作だがセリフは英語。監督:バーナード・ローズ(「不滅の恋/ベートーベン」)主演のデイヴィッド・ギャレットは製作総指揮にも名を連ねている。音楽も担当。もともと演奏するだけで、出演する予定はなかったのだが、途中で監督から、なんなら自分で出たらと言われ、本人もすっかりその気になったとか。確かにこれだけの超絶技巧の演奏となれば、俳優がいくら練習したところで、おっつかないもの。

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クラシックに限らず、器楽演奏者を主人公に据えた作品で、演奏者=主演者という例はほとんどないのではないか。古くは「グレン・ミラー物語」(ジェームス・スチュアート)、「ベニー・グッドマン物語」(スティーブ・アレン)、「愛情物語」(タイロン・パワー)、比較的新しいところでは、「本当ののジャクリーヌ・デュプレ」(エミリー・ワトソン)、日本では「おくりびと」のモックン、etc.  「オーケストラ!」でバイオリンのソロ演奏をしたメラニー・ロランなど、猛練習の甲斐あって、違和感がなかった。でも、「25年目の弦楽四重奏」のような失敗例も、たまにはある。役者がどんだけ楽器に対して情熱を傾けるかが成否の分かれ目。中には、プロ並みになっちゃう人もいるらしいから。

さて、余りにも人間離れした技巧から悪魔のバイオリニストと呼ばれ、奇人扱いされたパガニーニが、恵まれた才能を持て余し、酒と賭博と女に耽溺している間隙を縫って、山師とも言える興行師、ウルバーニが登場。奇妙な契約(まさに悪魔の契約?)を結び、一旦はロンドンで大成功を収めるも、それは一時の夢、結局破綻していく様を描く。

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現在残されている彼にまつわる逸話を結構取り入れている。賭ける金が底を付き、手持ちのバイオリンを賭けて、負けてしまったことや、演奏中に、余りの激しい演奏に名器が耐えられず、E線から順に切れ、最後はG線のみで演奏し切ったことなどは、なかなか興味深い。しかし、前半はかなりだれて、眠くなる。

彼をロンドンに招いた指揮者の一人娘でソプラノ歌手との恋愛話などは、フィクションと思われるが、結構、うまく出来ている。ただ、それほど上手でもない彼女の歌唱を前面に出すのは、いかがなものか。せっかく後半面白くなったところだけに、この組み立ては惜しまれる。

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ところで、ギャレットの演奏振りは、音質も含めて、確かに豪快そのもの。このぐらい大げさと思えるほど極端に弾かないとパガニーニらしさを表現しきれないだろう。という点で、彼の起用は一応成功だろう。でも、言われるほどイケメンではないが。ドイツ生まれだそうだが、どこか中東風。

端役だが、バーガーシュ卿役であのヘルムート・バーガーが久々の登場。現在69歳。若い頃、ルキーノ・ヴィスコンティの「地獄に堕ちた勇者ども」(1969)」、や「ルートヴィヒ/神々の黄昏」(1972)という大作に主演している。

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⬆なかなかのイケメンぶりだ。今は見る影も無いが。

 

#62 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから