140827 原題:GRANDE BELLEZZA(偉大な美)141分 伊/仏 [監][脚]パオロ・ソレンティーノ(ナポリ生まれの44歳と若い。《2011》アイルランドとの合作の「きっと ここが帰る場所」など、これまで寡作)
若い頃に書いた唯一の小説が大当たりし、印税で悠々自適の生活を送るジェップ(JEPは珍しい名前だ。何かの略称だろうけど)、夜な夜なパーティーからパーティーをはしごして回るような一見優雅なセレブライフを満喫しているようだ。出で立ちも、上にあるように真っ黄色のジャケットに白いパンツ、コンビの靴にチーフと、60も半ばの初老の男にしては随分ビシッときめてくれる。
うわべからは窺い知れぬ翳を内面に宿しているのは一人の女性の存在。初恋の相手、エリーザが30年もの間、実は自分のことをずーっと思っていてくれたことを初めて知ったばかりから、最近亡くしていたのだった。
パーティー会場ではテキトーにチャラチャラ過ごし、コロシアムを見下ろす豪邸に戻れば、空虚な喪失感をひたすら感じる日々に、独り悶々とする。この落差を、美しいローマの街を背景に描く手法は、どこかフェッリーニの作品を見ているような錯覚を覚える。そう「アマルコルド」、「甘い生活」、「カビリアの夜」とか「8½」のあの世界観。
こんな難しい役どころを、このところ頻繁に登場するトニー・セルヴィッロが実に巧みに演じている。
また共演には、ただ今イタリアで最も人気のある女優サブリーナ・フェリッリ。何せ50歳にしてこの美貌と肢体だから、それもむべなるかなだ。(尤も、撮影時期はかなり前かも)
父親が共産党員という影響で、彼女自身、左翼であると公表している。熱烈なAS ROMAのファン。
冒頭のシーン、何故か日本人観光団の一行を案内するイタリア人ガイドの日本語解説が出て来る。場所はジャニーコロの丘にあるパオラの泉。余り日本人観光団はこんなところには行かないと思うのだが、ソレンティーノの意図がよく分からない。
ついでだが、2011年1月に中部イタリアのジリオ島で座礁したコスタ・コンコルディア号の横倒し現場を、主人公がじっと眺めるシーンがある。何のメタファーか。
#71 画像はIMdbより。