140929
現在84歳のクリント・イーストウッドが製作・監督を担当した最新作。この年にして、このようなみずみずしい作品を生み出す才能には、改めて脱帽!
一世を風靡したヴォーカル・グループの栄光と挫折を描く。ミュージカルとしても、大人気だったものを映画化したわけで、土台はすでにあったとは言え、やはり映画としても素晴らしい仕上がりだ。
イーストウッド監督は、有名俳優を排して、歌手としての実績のある者達を主役陣に充てたという。でないと、楽譜をいきなり初見でハモっちゃうような芸当は普通の俳優には無理だろう。
フランキー・ヴァリをやったジョン・ロイド・ヤングはミュージカル版でもこの役を務めた歌手だから、慣れたもの。それにしても、彼の高音はややクセがあるものの、素晴らしい。
⬆️いかなるヴォーカル・グループも一旦てっぺんに上り詰めると、メンバ−同士の確執から分裂の危機にさらされる。それにしても、ここまで言うかというほど、それぞれが互いにこれまでの不満を徹底的ににぶつけ合う姿は、我々日本人には理解の外。
我々世代は、大ヒット曲、「シェリー」や、どれだけの有名歌手たちがカバーしたか知れない「君の瞳に恋してる」などをリアルタイムで聞いた経験があるので、ことさら懐かしくこうしたシーンを見た。(因みに、日本では「シェリー」を九重祐三子とパラダイスキングやザ・ピーナッツが歌っていた)
メンバーの一人一人が、演奏中にも画面に向かってモノローグ風に語りかけるスタイルはミュージカル版でも採用されたのだろうか。とても新鮮に感じたが。
彼らはニュージャージーの貧しい地区ベルヴィル育ちで、地元を仕切るマフィアであるジップ・デカルロ(クリストファー・ウォーケン)が、早くからフランキーの才能に目をつけ、最後まで面倒を見る姿がなにか微笑ましい。ウォーケンのまったく訛りのないイタリア語には恐れ入った。
ある場面で、白黒テレビにクリント・イーストウッドの顔が大写しになるので、場内に笑が起こる。「ローハイド」からの一場面で、これは脚本家のアイディアとか。イーストウッド自身は文句をつけたらしい。
エンディングでは、オリジナル音源による「シェリー」が流れる。
#80 画像はALLCINEMA on lineから