ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「フューリー」

141202 原題もFURY(激しい怒り)英 135分 実話を基にした原作に惚れ込んだブラピが自ら製作した渾身の戦争ドラマ。監督のデヴィッド・エアーの米人だが、なぜか英国映画。

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1945年、第2次大戦終結4週間前のある1日のドラマ。連合軍は首都ベルリンを目指して進軍中だが、依然地上戦では火力に勝る独軍に悩まされていた。そんな中、FURYと砲塔に大書したシャーマン戦車と、その乗員5名が、ある十字路を陥落させてそこを死守せよとの命令を受ける。仲間の戦車4台と共に進軍するが、果たせるかな、鉄壁の独戦車タイガーによって、仲間の戦車が次々に破壊され、ついにFURY一台になってしまう。敵軍の中に孤立したFURY, さて、どう戦うか。

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戦車というのは、どのように戦うのか、この作品で初めて知った。5人揃わないとまともに戦えないということも。ウォーダディーと呼ばれるドン・コリアー(ブラピ)が一人だけ上部にいて、すべての指示を出す。生身を外に晒しているから危険この上ない。

ブラピの横にいる通称バイブル(シャイア・ラブーフ)は大砲を発射する重要な役どころ。奥の男は、最も目立たないが、砲弾装填作業ほか、銃弾の補給を一手に。そして全面の二人が機銃掃射専門。左側の坊や、後にマシーンとあだ名が付くノーマン(ローガン・ラーマン)はほんの新米で、散々子供扱いされるが、最後、戦いが終わる頃には超一丁前の戦士に成長。

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まるで父親のようにノーマンを愛情を持って鍛え上げていくドンの生き様がたまらない。ノーマンにわずかな時間で戦争とは何かを身を呈して教える。そんな中、「理想は平和だけどな、歴史は残酷なもんよ」という言葉を何気なくノーマンに投げかける。

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三銃士 王妃の首飾りとダヴィンチの飛行船」、「ノア 約束の舟」で見たローガン・ラーマン、ご覧の通りまことにあどけない22歳!この作品で、ずいぶん得難い経験を積んだようだ。

またシャイア・ラブーフも、いつもはフニャフニャした役ばかりだが、この作品ではまるで別人の如し。本人も物凄い入れ込み方で、顔の傷はメイクでなく、本物。敢えて痛みも経験したそうだし、歯も一本抜いたり、撮影中は一切シャワーも浴びないという徹底ぶり。恐れ入ります。

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登場する戦車はすべて本物。博物館から撮影のために借り出したそうだ。とりわけドイツのタイガー戦車は本物がごく限られている中で、よく借り出せたものだ。それだけにその迫力たるや!

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⬆️タイガーvs.シャーマンでは、まるで勝負にならない筈だが、操車能力で奇跡の勝利。タイガーの弱点を徹底的に探り、後ろに回りこんですばやく大砲を打ち込むシーン。空中撮影もあり、最大の見せ場だ。

せっかくタイガーに勝利したというのに、何と地雷を踏んで、キャタピラーを破損、動けなくなったところへドイツの一個中隊が進軍してくる。もはや絶体絶命!当然この場は戦車を放棄して、逃げるしかないわけだが、何とドンが取った行動とは!その時のセリフがいい。「だって、これが俺の家なんだから」(It's my home)と万感の思いを込めてつぶやく。そして4名の部下に早くその場を立ち去るように命じるが・・・。

プライヴェート・ライアン」の戦車版と言うと、やや語弊があるかも知れぬが、戦争映画としてこれほど最後までスクリーンに釘付けになった作品があったろうか。戦車が主役という作品にはケン・アナキン監督の「バルジ大作戦」(1965)が有名だが、出来栄えは比較にならない。

#96 画像はALLCINEMA on lineから