ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

宮本三郎美術館@奥沢

140603 奥沢にあるベトナム料理屋Châuで、嘗ての職場の同期生たちと会食することになり、その前に、たまたま近くにある美術館へ半時間ほどお邪魔した。

この美術館、ひっそりと住宅街に建っているので、訪れる人は余り多くないと言う。宮本三郎のアトリエ兼居宅の跡地に建てられたこじんまりとした洒落た美術館である。

現在は、宮本三郎(1905-1974)の初期の作品が展示されている。いずれも世田谷美術館所蔵の作品群。彼の画業を3期に分けて、今後も展示する予定とか。中期、後期の作品も見に来よう。

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いずれもほとばしるような堂々たる筆力には圧倒される。彼は第1次大戦開戦直前までヨーロッパに滞在し、とりわけルーブル美術館で、レンブラントなどの作品と直接対峙して模写を繰り返す等、僅か1年ほどの滞在だったらしいが、驚くほど多くのものを吸収したと思える。当然ながら、作風もそうしたヨーロッパの巨匠たちの影響と、折々の変化が窺えて、なかなか楽しい。デュフィ風、マチス風、ボナール風、グリューネヴァルト風、安井曾太郎風、小磯良平風・・・等々。

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戦時中は戦争画家として徴用され、多分本人に取って本意ではなかったろうが、戦争画にも数々の名作を残した。上はイギリス軍のパーシヴァル中将に対し、山下奉文大将がイエスかノーかと降伏を迫る有名な場面。(「まずは降伏の意思があるかどうか、聞かせて欲しい」と穏やかに言ったのが、後に脚色されたとか)

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生活の為と言うことで、随分挿絵も描いたようで、週刊誌や少年少女雑誌に彼が描いた作品群も展示されていた。居住地の名前と三郎をもじって「奥澤二郎」という変名を用いたようだ。ただ、挿絵を描くことで時間を取られて、本来の制作活動に支障を来たしたという指摘もあるらしい。そんなわけで金銭的には比較的恵まれていたからこそ、当時としては珍しい鉄筋コンクリート2階建ての邸宅を奥沢の地に建てることが出来たようだ。

(上の画像の一部は同美術館のHPからお借りした。)