150901
上演時間(どちらも70分強)の関係と、同じヴェリズモ・オペラとということで、この二つの演目は同時開催されるのがほぼ常識になっている。
まずはカヴァレリア。開幕場面は復活祭の朝という設定だが、いきなり夜景で、「あれれ!」という感じ。上手にスチール製の階段、奥に、大きめのキリスト磔刑像。下手に粗末な卓と椅子が少しだけ。まあごく普通のしつらえである。
サントゥッツァが現れ、引っ込み、次に亭主のトゥリッドゥが現れ、すぐ舞台裏に。そしてハープの伴奏に乗って「シチリアーナ」が聞こえてくる。再びサントゥッツァが現れては引っ込みで、彼女が実際に声を出すのは開幕20分後。どうもこの彼女の冒頭の一連の動きの意味が明快に伝わってこない。でも、暗い場面だけに照明が驚くほどの効果を生む。
しばらくして、やっと本来の明るいシチリアに。寒村であっても、この日は特別だ。舞台は村人たちによる賑やかさを取り戻す。子供達がそこらじゅうを駆け回り、村の若人たちが、農機具やら収穫物を持って登場し、「はじまり、はじまり〜!」という感じ。
それにしても、サントゥッツァというのは哀れな女だ。薄々感づいてはいたんだろうが、亭主をローラに寝取られてしまうんだから、ま、気の毒というしかない。さらに挙げ句の果てに、アルフィオに殺され、アッという間にサントゥッツァは後家さんに。トゥリッドゥのおっかさんと暮らすことになるのだから、全く希望の見えない幕切れ。
サントゥッツァを演じた二瓶純子さん、リリコスピントか、声の張りが素晴らしかった。マンマルチーアの末広さんは、身体全体がかなり華奢な印象で、歌はお上手なのだが、この役をやるには、もう少し重量を増やして欲しいところだが。
トゥリッドゥの青栁素晴さんは、ちょうど3ヶ月前に牛込でこの役を演じたばかり。その時の演出が、あまりにも鮮烈だったこともあり、見ている我々も、どうもその時の熱演ぶりが印象強く、いささか今回の動きに物足りなさを感じてしまった。歌唱そのものは、もちろん一点、非の打ち所がないほどの出来。
一方、パリアッチは、ルッジェーロ・レオンカヴァッロ作の、ヴェリズモオペラ。ここはカラブリア州モンタルト・ウッフーゴの村はずれ、今日は聖母被昇天祭(8/15)、旅興行一座が到着し、浮かれた村民たちが、老若男女打ち揃って、左右からウキウキと舞台に登場。なんのことはない、カヴァレリアとそっくりなのだ。子供たちがやたら走り回るのだが、なんとなくカヴァレリアの続き?てな雰囲気。何かもう一工夫できなかったかな。
こっちも最後は、壮絶な悲劇に見舞われ(今回の死人は二人だが、演出によっては3人というのも)、"La commedia e' finita!"(もう芝居は終わりだ!)という、有名なカニオの一言で幕だが、一番の聞かせどころは、何と言ってもカニオのVesti la giubba(衣装をつけろ!だろう。及川尚志さん、思いっきり高音部を響かせ、うまく演じていた。
不倫を働くカニオの女房、ネッダを江口二美さんが演じた。彼女のネッダを見るのは初めてだが、亭主を裏切って、他の男と駆け落ちしようってんだから、こりゃ難しい。さすがにずいぶん苦労されたようだ。他の演目では見られないような本格的ラブシーンもあり、シルヴィオとの稽古にずいぶん神経を使ったに違いない。
初めての方で、Qual fiamma avea nel guardo「あの人の眼の激しさ、もしかして私の秘密を」と、不倫がバレたかと恐れおののき、やがて視線を上に向けて、Stridono lassu' 「あの大空にさえずって」と鳥の歌を歌うが、この感情の起伏を物の見事に歌い分けて、今日の調子はすこぶる上々と感じた。強弱を絶妙にコントロールしていて、見事!
カーテンコールでは、オペラ・ノヴェッラの代表の方が登壇されたが、ちょっと痛々しい姿にショックを受けた。早い回復を祈るばかりだ。
終演後、隣町の町田まで繰り出し、青栁さん、江口さんを囲んでの打ち上げで、大盛り上がりだったのは言うまでもない。
上、パリアッチョの衣装をつけたカルーソ。
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