ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「待つ女たち」(仮題)@イタリア映画祭

160503 原題:L'attesa

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上の二人が主人公。方や息子を、もう一人は恋人を待ち続ける、とは言うものの、わずか数日のお話。舞台はシチリア、ラグーサ近くの古い屋敷。まるで音のない世界に、ひっそりと物語は展開する。

恋人ジュゼッペに招かれたと言って、なんの前触れをなく突然片田舎にやってきたジャンヌというフランス人の出現に、驚きを隠せないアンナ。無表情のままジャンヌを迎える。ぎこちない会話が途切れ途切れに。

二人が待ち続けるジュゼッペは、なかなか現れない。この屋敷に長く使える使用人ピエトロが、「どうせ明日になれば分かってしまうんだから」と謎めいた言葉を主人に投げかける。

突然、ジュゼッペが入浴中で、傍にアンナが息子の手を握りながら、会話を交わすシーンが挿入される。どうやら、アンナの想像シーンらしいということが次第に分かってくる。この場面、ジュゼッペの姿は巧みにすりガラスで遮られて、声しか聞こえない。

初めこそ、イタリア語で会話していたアンナとジャンヌ、やがてフランス語に変わってくると同時に、双方の表情に大きな変化が現れる。

結局、ジャンヌはしびれを切らして、パリへ帰っていく。見るものに謎かけをしているような作り込み方であるが、原作があのルイージピランデッロ(1867-1936)と後で知って驚いた。

舞台が因習の残るシチリア深奥部、主役が二人ともフランス人、原作が前世紀初頭に活躍した劇作家、監督がシチリア、カルタジローネ(映画にもちょっと登場する)出身の若手、ピエロ・メッシーナ(36)という組み合わせが、見事な化学反応を起こしている。

主演のジュリエット・ビノーシュの押さえた演技、対する新人ルー・ドゥ・ラージュの初々しい演技、どちらも素晴らしい。当初、メッシーナ監督はイタリア人女優を主役に充てる計画だったらしいが、ビノーシュの演技を見て、すっかり惚れ込み、彼女のために脚本を書き直したという。ビノーシュは英仏語を完璧に話すバイリンガルだが、イタリア語もなかなか。

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ビノーシュとメッシーナ監督

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ルー・ドゥ・ラージュ

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キャスト陣と監督@ヴェニス国際映画祭

#36