ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「帰ってきたヒトラー」

160713 原題:ER IST WIEDER DA 独 116分 脚本・監督:ダーヴィト・ヴネント(39歳、これが初の日本公開作品。監督と脚本を半々ぐらいずつ手がけている)

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まさかこのような映画がドイツで作られとは思わなかった。何せあの国では、”ヒトラー”は禁句、タブーだし、ナチ式敬礼など公衆の面前でやったりしようものなら、しょっ引かれそうな雰囲気だけに、よくぞとヴネント監督には拍手だ。

1945年に自殺したヒトラーが21世紀にタイムスリップしてくる。

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しかも当時の帽子と軍服着用のまま。当然、周りはびっくりするが、やがてお笑い芸人のソックリさんだろうという認識に。

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やがて、こりゃ売れそうだと思ったテレビ局が彼を番組に出演させて視聴率を稼ごうと企む。だが、本物のヒトラーだけに、70年後の世界の実態を素早く把握、彼独自の分析で、次々に現代の腰抜けドイツとドイツ人に対して警句を、例の雄叫びのような調子で語り始めるから、テレビも扱いに窮するようになり・・・。

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ブランデンブルク門付近で観光客にもみくちゃにされるヒトラー。この辺りは実写であろう。他にも実写シーンが多く、俳優(素人のオリヴァー・マスッチ)もアドリブで演じたり台詞を言ったりしている。モザイクをかけたり、目の付近を黒くするなど、偶然映り込んだ人物たちには最大限気配慮しているのがよくわかる。やはりこうした特殊な映画だけに、撮影にも最大限の神経をとがらせているようだ。

また、さらに驚くのは、現役の政治家が何人も実名で登場することだ。リスクはないのかねぇ。我々日本人が見てもよくわからない場面もドイツ人が見ればまったく別の興趣を持たれるのだろう。その辺の機微がもう少し伝われば、もっともっと楽しく見られたはず。この種の映画を見る場合は、覚悟しておく必要のあるリスクだ。

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主役を演じるオリヴァー・マズッチの若さにはびっくり。48歳。

#57  画像はIMdb、およびALLCINEMA on lineから