160804 原題:TRUMBO 監督:ジェイ・ローチ(TV向け作品が多く、日本公開作品では目立ったものはない)
天賦の才能を持ちながら、自らの思想信条ゆえ、それを十分発揮する機会を封じられ、家族を養うために、やむなく他人の名前や偽名で数々のヒット作を世に送り出した稀代の脚本家、ドルトン・トランボが最終的に自由を勝ち取るまでの感動的な作品。
⬆︎風呂の中が、最も落ち着いて作業できる場所だったらしいが、家族はたまらない。この時代、生活費を稼ぐため、B級作品を粗製乱造していて、気持ちも最も荒んでおり、特に娘と衝突することもしばしば。
彼は、勇気ある仲間9人(彼を含めてのちにHollywood 10と呼ばれる)と共に、米国下院非米活動委員会に召喚されるも、憲法で保障された人権を楯に証言を拒否したため、実刑判決をくらい、1年間収監されている。だが、中には司法取引で仲間を”売り”、”転ぶ”ことで、自由の身になったエドワード・G・ロビンソンや、エリア・カザンなどがいたのも事実。当然、裏切り者である彼らに対する世間の風当たりは相当なものがあったようだ。
⬆︎実刑が確定し、カリフォルニアのVan Nuys空港から収監される地に向かうことに。家族や支援者が多数見送りに。
結局、アカデミー脚本賞を取った「ローマの休日」や「黒い牡牛」の脚本家がトランボだったと実証され、後年、オスカーが彼や、彼の死後は家族に手渡され、映画のクレジットも書き直されている。
⬆︎当時ゴシップ記者として天下に名前を轟かせていたヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン、最近ハリウッド作品に登場することが多くなった)からも執拗に絡まれるトランボ。
彼が共産党員であっても、その才能に惚れたカーク・ダグラス(「スパルタカス」)や監督のオットー・プレミンジャー(「エクソダス - 栄光への脱出」)が監視の目をかいくぐって彼を自宅に訪問し、脚本を書いてくれと直接交渉する場面など、ハリウッド裏話がふんだんに出てくるので、それだけでも映画ファンには堪えられない。
ところで、日本では、ダルトン・トランボと書かれるが、劇中何度も出てくるが、実際の発音はドールトンであり、百歩譲ってドルトンと表記すべし。(他に、いつも気なるのが賞を表すawardが、日本では常にアワードと表記されたり発音されること。これもアウォードが正解で、カタカナで表記可能なものはできるだけ原音に合わせる努力をすべきだろう。War(戦争)のことを誰もワーとは書かないし言わないのに。また話がそれた)
また、この邦題だが、原題のトランボだけでは、インパクトがないかも知れないが、ハリウッドから最も嫌われた男というのもいかがなものか。奇をてらいすぎだろう。別にハリウッドを敵に回して活動したわけでもないのに。
#61 画像はIMdb、およびALLCINEMA on lineから