ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「イル・トロヴァトーレ」(演奏会形式)@かつしかシンフォニーホール

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演奏会形式ゆえ、舞台装置と振りこそないが、立派なオケと合唱が付いて、ノーカット演奏だから、3時間近い大熱演。それで、たったの3,000円だもの。この日入った聴衆はえらく得した気分だろう。

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レオノーラ、ルーナ伯爵、マンリーコ、アズチェーナの主役級4人はほぼ出ずっぱりで、大変な重圧に耐えてよくぞ頑張った。とりわけ、レオノーラを演じた西本真子が次から次へと出てくる名アリアに見事に対応、この若さで大したものだ!

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ルーナ伯爵の渡邉弘樹フィレンツェ在住なので、日本の聴衆にはそれほど馴染みがないかも知れないが、超一級品のバリトンだ。もともとはテノールだったそうだが、おそらく指導者の助言で何年か前にバリトンに転向ようだ。滑らかでソフトな高音域に特徴があるように思えた。後で知ったことだが、左の声帯に変調を来たしていて、本人の感覚ではいつもの7~8割の出来だったそうだが、本来の歌いっぷりを何としても聞いてみたい。

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マンリーコの城 宏憲、新国立のオペラ研修所10期生。忘れもしない2009年末、研修所10~12期生のお披露目コンサート(@国立新美術館)で初めて聴かせてもらって以来、ずーっと気になった存在。容貌同様、端正で気品のあるテノール。ただ、今日はやや本調子ではなかったように見え、本人も少し不本意だったかも知れない。終演後、ロビーで一番人だかりが出来ていて、人気のほどが知れる。

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アズチェーナを演じた巌淵真理の熱演も光った。この人の天鵞絨のごとき発声は、昨年5月の「カヴァッレリーア・ルスティカーナ」でのマンマ・ルチーア役で確認済み。我が子を間違えて火にくべてしまい、代わりに育て上げたのは母を火あぶりにした先代伯爵の次男(マンリーコ)という、難しい役どころ。感情の起伏を見事に表現し尽くしていたと思う。

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4幕で、その仇敵の息子と歌うAi Nostri Monti(我らの山へ)は心を打つ。途中から自分の本当の息子のように感じたであろうマンリーコを間もなく失う悲しさと、「母さん、やっと仇が打てるよ」と勝ちほこる相反する感情を抑制し、しみじみと歌う二重唱のなんと美しい響き。テノールの低音域とメゾソプラノの高音域が、ほぼ同声のように交錯していく部分がたまらない。

最初に登場するのがフェランド役、ベテランの志村文彦。お馴染みの顔だ。オペレッタでひょうきんな役を得意とするようだが、こうしたセーリアでもうまいのなんの。バスの響きは本物だ!

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忘れてはいけないのが、このエルデ・オペラ管弦楽団合唱団。よほど稽古を重ねたに違いない大熱演には、ソリストたちもきっと勇気をもらったと思う。

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4役に力量ある歌手を揃えるのがなかなか大変で、これまでそれほどの公演回数を記録していないと、実は昨年までは思っていたのだが、なぜか最近、このオペラの公演が増えてきたのは嬉しいことだ。何しろ、これほど素晴らしいアリアが1幕から終幕までふんだんに出てくるオペラも滅多にないからだ。

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一般的には主役級が中央に並ぶのだが、先輩たちに遠慮したのか、プリマが端にいるという珍しい写真になった。(尤も、これは2度目のカーテンコール。最初の時は、確かに中央にいたっけ。一度目は、単に当方の撮影態勢が間に合わなかっただけでした。)

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