161115
珍しいオペラを見た。岡倉天心がこういうものを残していたとは、まったく知らなかった。それを美しい旋律をふんだんに盛り込んだオペラにまで仕上げてしまった平井秀明もすばらしい。
今回は、所属する合唱団の女性団員が数名、それと合唱指導をお願いしているテノール、猪村浩之さんが出演することもあり、初めてこのホールへ。以前も書いたことがあるが、豊洲は今から60年以上も前に数年住んだ土地だが、どえらい変貌ぶりだ。メトロ有楽町線豊洲駅徒歩1分という至便この上ないホールの立地はありがたい。
タイトルロールの菊池美奈さんはすでにヴェテランの域に達している定評あるソプラノ、見事な歌いっぷりはもとより、和服姿での演技も観衆・聴衆を最後まで魅了した。
我がイムチン先生こと猪村浩之さんも、力強い高音をホールいっぱいに響かせ、また烏帽子、直垂、袴など、どれもぴたっと決まっていた。舞台映えのする姿は、やはりこういう作品でも目立つ存在だ。
つい先ごろ日本音楽コンクールで見事優勝されたソプラノの村元彩夏さん、ひとり三役でがんばっておられ、まことに嬉しい限り。
それに悪役の悪右衛門(アッケイモン)のバリトンのベテラン豊島雄一さん、主役級では独りだけ悪役でがんばっておられた。失礼ながら、悪役にはよく似合っているから仕方がない。
充実した合唱団も特筆に値する。元々妙高市の委嘱で作られた作品ゆえ、同市の合唱団からも多数参加されていたようだが、男性15名、女声41名と、たしょうバランスを欠くのは世の常で仕方ないにしても、猛稽古に耐えた歌声は素晴らしかった。
ストーリーはそれほど込み入ったものではないが、日本語とは言え、歌声で理解するのは、かなり困難であることがよく分かった。その点、外国物で原語上演日本語字幕付きというのが、一番分かりやすい。演奏中に解説を見るのがベスト。このホールは、一定の光量があるから、ありがたい。
猪村浩之さんの隣はダンサー。中央、村元彩夏さん、マエストロ平井、右端はタイトルロールの菊池美奈さん。
最前列の1列目だけ外して、バイオリン、フルート、オーボエ、クラリネット、ここには見えないが左端にピアノという伴奏の布陣。今回は演奏会形式とは言うものの、舞台装置がないのと、オケが最小編成というだけで、コスチュームも振りも本格的なものだから、この値段では申し訳ないぐらいだ。いやぁ〜すごく得した気分で会場を後にした。
#64