170219 愚亭にとって、多分最後となる国技館第九、今年で実に33回目となる。
図らずも連続3度参加したこの第九は、今回が歌い納めとなりそうだ。マエストロは31回、32回が松尾葉子、今回が下野竜也。二人の第九に対する考え方の違いが明確で、歌う側としては、面白い経験ができた。
下野第九は、ベートーベンが指定した演奏速度にこだわりがあり、第4楽章の終演部の並外れたスピードには、初めて接した時は、会場がどよめいたほど。慣れてみれば、どうということもないのだが、それ以外の指揮者がかなりゆっくり目ということかな。
一般的には72分とされている(カラヤンはCDの長さをこれに合わせて72分とすることをソニーの当時の大賀社長に提案したとか)のだが、今回、手元の時計ではちょうど60分ということだから、どれほどのスピードだったか想像できるだろう。
ソリスト陣: 31回 32回 33回
ソプラノ: 佐々木典子 → 小林沙羅 → 半田美和子
アルト: 増田弥生 → 増田弥生 → 清水華澄
バリトン: 福島明也 → 福島明也 → 福島明也
福島明也は、第12回を皮切りに、全部で17回も登場していて、国技館第九の主のような存在。
5,000人とは言うが、実際には4,800名弱。桟敷席を4人から3人へと余裕をもたせた関係らしい。「世界各国からもご参加」と、主催者は胸を張るが、日本に住んでいる外国人が参加しているのが実態。それでも計25名とは、立派な数字。その半分が、作曲家の出身国、ドイツであるのは、何となく納得だ。
それより、北海道から沖縄までほぼ満遍なく参加者がいる方が凄い。練習はそれぞれ地区ごとに行われていて、全員が集まるのは前日のただ一度だけで、しかもこの人数だから、ピタッと息が合う方が不思議なぐらい。その点、今回の下野マエストロのタクトの振り方は、実に豪快かつ明快で、団員からもすこぶる評判がよかった。
昨年は椅子席を希望したら、土俵からはるか遠くで、オケの位置はまさに谷底を見下ろすような感じ。いささか恐怖心も覚えたので、今回はまた桟敷に戻してもらった。「向う正面9列14番」と言うのは、会場全体のおへその部分にあたり、マエストロが真正面に見える最高の席が割り振られた。
今回、ソリスト陣が登場するのは、何と4楽章の演奏途中!!普通は3楽章が終わると入場するもんだが、いかなる意図があったのか、例の歓喜のメロディーがTUTTIになった頃合いを見計らって、左右から静かに定位置に。
いよいよ出番が近づき、周辺の爺さん連中、一斉にそわそわし始める。桟敷で立ち上がるのは結構コツがいるから、練習をしたのだが、それでもみっともない姿だけは皆見せたくないから緊張の一瞬。バリトンの福島さんの頭が動いた瞬間、狙い澄ませたようにパッと一斉に。同時に斜め上の4隅から眩しいばかりの大スポットライトが大合唱団を狙う。
今回は、バリトンに続く”フロイデ!”と唱和するのは、我々バスだけ、テノールは口を閉じているようにと指示が直前にあり、テノール陣はいささか落胆の様子。
まあまあ順調に進んでいるのだが、真後ろのおっさんがバスでもかなり高音域となるザイトゥムシュルンゲンから、調子が外れっぱなしとなる。前日のゲネでも気づいてたが、注意するわけにもいかず、気になって仕方なかった。また、斜め前の爺さんは強めに歌う場面で、いちいち頭だけでなく身体全体を大きく揺すって歌うから、これも視覚的に気になるし、どうにも弱った。
そして最大の難所のプレスティッシモヘと。トホターラウス・エリュジウムも何とか通過、最後のフロイデシェーナーゲッテルフンケンも、ゲネの時より上手く行ったようで、よかった、よかった。
この後、北海道から順に参加人員の発表があり、沖縄の14人の発表に一番大きな拍手が湧いたのは当然だろう。ちなみに東京は2,741名!またパート別にはアルトが最多で、2,346、ソプラノが1,503、テノール、394、バスが545、計4,788が今年の参加総数。
あらかじめ渡されていたペットボトルのお茶でかんぱ〜い!!
私服に着替えたマエストロとソリストたち。一人ずつご挨拶。マエストロは、笑わせるツボを心得た見事なトークを披露。実にお茶目でチャーミングだ。他のソリスト陣も、総じてトークがお上手で、場内、しばしば笑いに包まれた素晴らしい”打ち上げ”になった。
蛇足ながら、前夜、今回も一緒に参加したアプリコ第九合唱団有志で、前夜祭をやったのが、ここ。
JR両国駅を出てすぐ右側にある場所で、昨年春までは「はなの舞」が入居していたのだが、昨年秋から、このように1階2階とも屋台村のような、いろんな居酒屋が入居するスタイルに変更されていた。我々は2階の「源ちゃん食堂」へ。そう言えば、先日「オテッロ」観劇後、打ち上げで使ったのも「源ちゃん食堂(オペラシティ店)」だったっけ。同じメニューがあったので、ちょい呑み@¥1,000と、飲み物をお代わりしてから、巨大おにぎりを食べて、@¥1,900也!