170503 昨年末、杉並公会堂での第九に合唱団の一員として舞台に乗ったが、その際、アルトのソリストを勤めた星 由佳子がカルメンで出演というので、滅多に行く機会のない会場へ。
星 由佳子の出来栄えは一言、素晴らしかった!だが、それ以外は、かなりいろいろあったような公演になったと思う。
この方、ご覧のような美貌と、すらりとした長身で、舞台映えのすること!特に、カルメンなどは、まさにぴったりのハマり役なのだ。終演後、ご本人から聞いたところでは、体調万全ではなく、必ずしも自身では納得の行く演唱ではなかったようなことをおっしゃていたが、そんな風には全く見えなかった。
この公演の問題はいくつかあると思うのだが、辛口になって申し訳ないけど、まずは演出の意図が少々分かりづらい。演出を担当し、またホセを演じた蔵田雅之はモーツァルト劇場(現在、代表を勤めていることは、⬇︎の略歴で初めて知った)などでも何度か聞いていて立派なテノールの一人である。
ところで、開演前に場内アナウンスがあり、昼の部のホセ役、池本和憲が、体調不良で、急遽夜の部予定の蔵田雅之が昼にも出ることになったと。この大事な役を一日2回演じる重圧からか、第2幕後半あたりから高音域に大トラブル。3幕以降は少し持ち直したように見えたが、まことに気の毒な結果だった。愚亭自身、以前聞いたことがあるが、堂々たる声の持ち主だけに、余計に慚愧に堪えない思いだったろう。
ご覧のように、オペラに対する立派な見識をお持ちで、これまでも赫赫たる成果を示されてきているが、まあ、稀にこんなこともあるのだろう。
演出については、すでに触れたように、演出家の意図が伝わりにくいことは否めない。それにだいたい子供達の出番が多すぎる!なぜ、子供達だけのフラメンコを二度も見なくてはならないのか、時間の使い方に工夫が足らないような気がしたが。
また、舞台のセットも、もう少しなんとかならなかったのか。クリスマスツリーにしか見えない木が2本、そこにクリスマスデコレーションのごとき飾り付け?全体にカラースキームがあまりに安っぽすぎる。
それから、舞台はアンダルシアなのに、まるで極寒のロシア兵が着るような厚手の軍服も違和感たっぷり。ついでに、オケもかなりいっぱいいっぱいの演奏だったように感じられた。
こう書くと、なんだかカルメンの一人舞台だった観、大ありなのだが、とは言え、チラシにも書かれているように、ユニバーサル・デザイン・オペラと銘打っているということは、老いも若きも健常者も障がい者も誰でもが参加可能という触れ込みの、いわば究極の手作りオペラと捉えれば、もう少し優しい眼差しで観る必要があるのだろう。ちょっと見方が辛口すぎたかも知れない。
(文中敬称略)
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