ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

オペラ「夕鶴」@曳舟文化センター

170617

f:id:grappatei:20170619130711j:plain

つうのアリアは何度か演奏会で聞いたことがあるが、オペラそのものを見るのは今回が初めて。すでに昭和28年の初演以来、800回を超える公演回数を誇るとか。日本が作った本格オペラでは、群を抜いた存在だ。もちろん海外でも上演されている。

團伊玖磨の、いかにも日本情緒を感じさせる美しいメロディーが、随所に散りばめられているが、いかんせん単調になりがち。独立して歌われるアリアも、つうが歌う「与ひょう、わたしの大事な与ひょう」一曲だけということで、オペラとしては、今ひとつ盛り上がりに欠けるのは否めない。そのせいかどうか、気づいたら周辺でもかなりの聴衆が居眠りをしていた。

木下順二作の物語はあまりにも知られており、登場人物も少ないので、オペラ入門編には向いているだろう。海外での評価はどのようなものなのか、外国人にどのように理解されるか、大いに気になるところだ。

f:id:grappatei:20170619140002j:plain

f:id:grappatei:20170619140038j:plain

与ひょうを演じた青栁素晴は、一昨年だったか、遠くマケドニアまで出かけて、この与ひょうを数回演じてきているらしい。彼はドイツもの、イタリアものなど、器用にこなすが、こうした和ものの代表格とも言える夕鶴での本役、人の良さそうで、純粋な心根を持った与ひょうもまさにぴったりで、はまり役になるのではないか、そんな感想を持った。

さて、肝心のタイトルロールの稲見里恵、舞台姿も大変チャーミングで、歌唱ももちろん文句なし。ただ、この役、中低音部が結構多くて、ややもするとオケの音響に消されがちで、もったいない気がした。できれば、イタリア系の演目をぜひ一度聞いて見たいものだ。

f:id:grappatei:20170619132918j:plain

稲見理恵は、本公演主催者、オフィス・アプローズの代表者で、オペラ公演の他、合唱指導や文化センターの講師など、活動は多岐にわたっている。

もう一人、惣ど役のバス、佐藤泰弘だが、初めて聞いた時も、その低音の響きに驚いたことがあるが、好き嫌いは別として、かなり深く印象に残るバスの一人だと思う。なんとも表現しにくい、ビリビリ、バリバリと響く声質である。

本公演の演出を担当したのは、元NHKの敏腕プロデューサーの杉 理一(85)。今から54年前の第4次NHK招聘イタリア歌劇団公演の際は、裏で陣頭指揮をしていた方で、ついでながら「青い山脈」に出演している杉 葉子は三つ上の実姉。確かに要望はそっくり。

f:id:grappatei:20170619133643j:plain

何しろ54年ぶりだから、当方はしっかり覚えているのだが、自己紹介しても、当時一介の学生通訳のことなど覚えているはずもなく、撮影をお願いすると、盛んにテレておられた。

#26 (文中敬称略)