ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

日本語版「ラ・ボエーム」@日生劇場

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応援している高橋絵理がムゼッタを演じるということで大いに興味を持った公演。チケット予約してから前編日本語上演と知って、多少動揺したが、恐れたほどの違和感はなかった。ただ、余りにも有名なロドルフォのCHE GELIDA MANINAやミミのSI, MI CHIAMANO MIMI, そしてムゼッタのQUANDO M'EN VOについては、やはりすんなりとはいかなかった。

 

日本語に置き換えた場合の音符との整合性みたいなものがすっきりはまらないのは否めないし、聞く側以上に、歌う側が大変だったとお察しする。

 

今後、日生としては、高校生を対象にこうした日本語上演を少しずつ増やしていく方向らしい。オペラファンの底辺拡大には一定の効果は期待できるかもしれないが、英国ですでに定着している英語によるオペラ上演のようにうまく行くかどうか。

 

主役級の4人は、皆さん素晴らしい演唱で、まったく文句なし。高橋絵理のムゼッタだが、歌唱自体にはなんの文句もないが、彼女の持っている雰囲気からすれば、やはりミミだろう。逆に北原瑠美の方がムゼッタ的雰囲気たっぷりという気がしたので、いずれ入れ替えバージョンで見てみたい。

 

今回、日本語上演だったが、字幕も出したことは英断だと思う。やはり歌になれば、日本語でも分からないことが多いのだから。

ところで、伊香修吾による演出もちょっとした話題に。幕が開くと、完全な静寂の中で、白一色の背景、ミミ以外の主役級の5人が登場、ミミの墓石と思しきところに白い花を一輪ずつ(ロドルフォだけは多め)置いて、四方へ去って行くと、途端に墓石が下へ吸い込まれ、あっという間に第1幕の屋根裏部屋のセットが組み上がって音楽スタートとなる、意表をつく演出だ。

 

第4幕は、ミミが息を引き取り、皆が嘆き悲しんでいると、ベッドごとミミの姿は下へ隠れて、墓石がせり上がり、冒頭のシーンとなる。よく計算された演出で、愚亭はこういう演出もありと思った。

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終演後、アフタートークがあったので、前から2列目に移動した見せてもらった。まずは演出の伊香氏が登場して一言挨拶。続いて主役級の4人が登壇、司会は自身オペラ大好き人間の元テレ朝アナウンサー、朝岡 氏。今回の苦労話などを中心に一人ずつにマイクを向けていた。

 

その後、入れ替わりにマエストロ園田龍一郎が登場、日本語上演についての苦労話が聞けた。彼はイタリア留学を通じて、いろんな技法を学んできただけに、そのことが自分の強みの一つと認識していると話した途端、横から伊香氏が、「でも、日本語、分かりますよね?」と畳み掛けていた。それはそうなんだが、やはり音符との関連性から言えば、イタリア語のセリフ・歌詞に合わせて作られているから、日本語をどのようにアダプトさせるかに最も腐心したようだ。それは、今回の歌詞を作った宮本益光も同様で、去年の九月から3人で頻繁に打ち合わせをしていたらしい。そこが今回の公演での一番の難所だったろうことは、容易に想像できる。イタリア語を英語に直すのとはわけが違うのである。

 

顔見知りのオペラ愛好家の一人、玉露氏に誘われるままに、楽屋裏へ高橋絵さんを訪ねた。日生のシステムはなかなか厳格で、簡単に入れてくれないので、結構時間がかかった。あらかじめ、申し込んでおく必要がある。すでに、メイクも落とし、完全スッピン状態だから、やはりちょっと楽屋まで訪ねるというのは、本来、控えるべきなのだろう。

 

以下は日生劇場撮影の画像をお借りして掲載。Photo by Chikasi Saegusa

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静寂の中で繰り広げられる第一幕冒頭と、ラストシーン。

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第一幕、Che gelida maninaを歌い始める場面 北原瑠美、樋口達哉

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カフェ・モミュス、すでにマルチェッロ(桝貴志)はムゼッタと仲直りしている。子供達の服装が随分金持ちそうなのが気になった。普通はもっと貧しい衣装なのだが。

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ムゼッタ(高橋絵理)が美脚を披露。

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第三幕、2組のカップルの競演。ダンフェール門(現ダンフェール・ロシュロー)の内側にあるカフェの前

 

#30 (文中一部敬称略)