ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ボンジュール、アン」

180711 原題:PARIS CAN WAIT(英)、BONJOUR, ANNE(仏) 米 92分(程よい長さだ)製作・脚本・監督:エリノア・コッポラ (フランシス・フォード・コッポラの奥さんで、ソフィア・コッポラの母親、自分の体験を基に作ったというから、なかなかの才人。すごい一家である)

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カンヌからパリまでのロードムーヴィー。自分にとっては懐かしい土地がいくつも登場、カメラングルも見事で、また、その土地の料理、ワインなどもふんだんに紹介されるなど、観光要素たっぷりの作品でもある。加えて、中年というか初老男女の大人の恋路みたいなものが絡んだりで、これははっきり女性向き作品。こんな甘っちょろいタイトルだけに惹かれて見にくるおばちゃん達が大多数だろう。

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愚亭が見る気になったのは、フランス縦断の旅の要素もさることながら、主演のダイアン・レインがどんな風に年齢を重ねているかに興味を持ったからだ。本作と同じようにカリフォルニアから中部イタリアへのバスツアーに参加した主人公(ダイアン・レイン)が、トスカーナ・ウンブリア地方の魅力に抗えず、ついに途中離団(コルトーナという小さな村)して、住み着いてしまう。時にイタリア男に翻弄されたりしながら、イタリア暮らしをたっぷり楽しむロードムーヴィが公開されたのは、今から14年も前。今や目尻の小じわも確実に増えたが、依然チャーミングだし、とても52歳とは思えぬ若々しさだ。

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子育ても終わり、仕事でカンヌ映画祭に出張するプロデューサーの夫、マイケル(アレック・ボールドウィン)に同行、ヴァカンスを南仏とパリで過ごす計画のアン。⬆︎旅のお供は白いライカ。まだ初心者らしく、景色以外、料理でもワインでもカメラを向けてしまう。

夫が急な仕事でブダペストに行くことになり、アンは先にパリに行くことにする。耳に持病があるから、飛行機は大の苦手。TGVの出番が順当なところだが、マイケルの仕事仲間で南仏在住のジャック(アルノー・ヴィアール)が、自分が車で送ってやると言い出す。それもいいかと話に乗るが・・・。

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せっかくプロヴァンスにいるからと、あちこち案内したがるジャック(多分、初めから下心見え見えだったが、)に誘われるまま、古代ローマの大構築物、⬆︎ポン・デュ・ガールの三段の水道橋を見たり、パリに行きたい気持ちと、滅多にできない地方巡りの旅の醍醐味を味わいたい気持ちのせめぎ合いが最後まで続くアン。

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ポンコツに近いジャックの車(PEUGEOT 504)は、途中でエンスト。予想してたかのように手回し良く、川辺でピクニックと洒落込む。

メカに弱い(本当か?)というジャックを尻目に、ボンネットに首を突っ込み、切れたファンベルトを引っ張り出すアン。しかも、着用していたストッキングを脱いで、ベルトの代用品を作っちゃうって、ちと出来過ぎだが。ま、それで再びドライブ開始。

途中、リヨンの有名な市場に寄ったり、市内随一という高級レストランで最高の料理と最高のワインを試したり、アンが興味を持っているという刺繍の博物館に入ったり、それはそれは充実した瞬間を何度も味わうことに。(パリに着いたら返すからと高級ホテル代やらレストランの支払いをアンのクレジットカードで済ますジャック、何か企んでるのかこの男と思わせる)

それにしても、このジャックという男、確かにサービス精神旺盛だし、女性には親切すぎるほどだから、時折スマホにかかってくるマイケルからの「フランス男には気を許すなという忠告がなくても、十分気を使っていたつもりなのだが、徐々にジャックのペースに巻き込まれて行く。

そして、2日目の深夜、パリに到着。途中、二人とも辛い過去を互いに吐露するシーンが挟まれていたりして、気持ちの盛り上がりを暗示しているが、まあ、最後は、やっぱりなぁ、という風にしてエンディング。(そうそう、途中でアンのクレジットカードで支払った金は全額、なんともオシャレな方法で戻ってきたが)

起伏はないけど、それなりに楽しめる作品。ところで、ジャックを演じたフランス人のアルノー・ヴィアールだが、俳優経験はなく、「メトロで恋して」(2003)の製作・脚本・監督をしたというから、意外なキャスティングをしたものだ。

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中央がエリノア・コッポラ監督。御年、80歳。こうした自伝的作品を監督した最高齢者はなんと日本の木村威夫!美術担当でほとんど映画人生を全うするはずだったが、晩年に自伝的作品「夢のまにまに」(2008)を撮ったのは90歳!上には上が。

#46 画像はIMDbから。