170828 原題:ELLE(彼女)131分 仏 監督:ポール・ヴァーホーヴェン(Verhoevenと綴るオランダ人、本来はフェルホーフェンとカタカナ表記すべきだろう。「氷の微笑」、「ブラックブック」)原作:フィリップ・ディジャン
まあ、よくこんなストーリーを考えつく者がいるんだというのが見終わった後の、率直な感想。フランス以外では、まず起こり得ないような展開である。要するに登場人物全員が一癖も二癖もある(日本人から見れば)変人揃い。
そろそろ老齢に入ろうとする主人公ミシェル(演じるイザベル・ユペールはすでに64歳!)は新鋭コンピューターゲーム開発会社の腕利きCEO。殺人鬼の父親は服役中、プチ整形を繰り返している老母は、財産狙いで近づく若いツバメとよろしくやっている、離婚した物書きの元亭主は若い女と同棲中、出来損ないの一人息子、ヴァンサンはバカな女に入れあげている。大変な家庭環境だ。でも一番変わっているのは性倒錯者でレズのミシェルだろう。
ある日、一瞬の隙を突かれて、全身黒づくめの男に押入られ、レイプされてしまう。犯人は誰か、思わせぶりな展開で、観客も一緒に探すことになる。レイプされても、父親のトラウマがあり、警察には届けないばかりか、それをきっかけにミシェルの中で、何かが変化していく。
⬆︎ミシェルが会いに行く直前に獄死(自死)した父親の遺灰を(おそらくセーヌ川)まくミシェル。(違法行為と思うが)
レイプ犯は意外な人物だったことが分かり、犯人との危険な関係が続く。ヴァンサンに犯人が撲殺されるまでは。
広い屋敷内で次々に起こる”事件”を目撃しているのは黒猫だけである。この猫ちゃん、ブスだが、演技力が凄い!
当初ハリウッドで映画化する手筈で、主演女優を探していたが、二コール・キッドマンや、ジュリアン・ムーアなど、大物女優にかたっぱしから断られる。それも即決。それぐらい、レイプシーンがなんども出てくる原作が女優探しを難航させる。結局、製作者はアメリカで撮るのを諦め、話をフランスに切り替えて改めて主演女優探し。原作を読んだイザベル・ユペールが意欲を示し、監督を逆指名。オランダ人のヴァーホーヴェンである。過去、一緒に仕事をしていないのに、多大なる関心をこの監督に抱いていたようだ。
今や、フランス映画界で右に出る者がいないほど名女優の地位を恣にしているユペールの、文字通り体当たり演技も見ものである。美人とは程遠いが、味のある、いかにもフランス女優ここにあり感がいい。
冒頭のシーン、演技をつける監督。
右端はレイプ犯のロラン・ラフィット
#56 画像はIMDbから