ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

合唱団定期演奏会奮闘記

171118 愚亭がこの合唱団に加入して最初の定期演奏会が10回目の節目のものとなった。前回の第9回からすでに3年近い。途中、団としては年初の第九合唱(@芸劇)があったために、これまでの間隔よりかなり長くなった。そんな事情もあり、「心の四季」とフォーレのレクイエムは、随分長いこと練習していたことになる。

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自分も実行委員の端くれだから、何度も委員会に出て、諸々の細目を決めていく作業に参加。そして迎えたこの日、朝からどんよりと冷え込んでいる。普通に起きて、昨夜のうちに整えていた荷物を抱えて、9時半に会場のアプリコに乗り込む。数人の委員たちが先着。そそくさと男声陣の楽屋へ衣装ほかの荷物を置いて、舞台裏へ。既にピアノの調律が始まっている。約2時間の予定だ。

まずは山台のセット。アプリコのスタッフ数人と一緒の作業。その間、ステマネ(ステージマネジャー)さんがあれこれ指示を出す。山台が組み上がったところで、一旦楽屋に引っ込むと、オルガン搬入が予定より1時間早くなっちゃいましたと、オルガン調律師からの連絡。舞台裏の搬入口に行くと、姿がない。搬入口とトラックの荷台の高さが合わなかったとかで、駐車場からの搬入となったのは、事前には把握できず。

考えてみれば、このいわゆるポジティブ(又は仏語式にポジティフ)・オルガン(なぜそう呼ぶのか不可解だが、元々はportatifという、持ち運び可能という意味の仏語が、変化したものという説もあるが、実はpose(仏語ではposer)できる、どこにでも置けるという意味のpositiveで、一方、portatif organは更に小さく、膝に置けるような超小型オルガンのことらしい)は、想像以上に小ぶりで、ちょっとした台車で移動可能なのだ。

小さな図体だが、中に管がぎっしり詰まっていて、これが温度差を微妙に感じ取るゆえ、早めに室内に入れて室温にならしておく必要があるとのこと。まるで赤ワインをシャンブレ(室温にする)するような話で実に興味深い。

ピアノ調律が終わったところで、マエストロにステマネさんが位置確認をして、オルガンが舞台ほぼ中央、ピアノの真後ろに配置。そこで調律開始。同じ鍵盤楽器でも構造がまったく異なるゆえ、調律の仕方も別物。電動モーターでふいごから送られた空気が様々な長さのパイプを鳴らすしかけで、このパイプの長さを特殊な装置を使って微調整していくのだ。

そうこうしているうちに小腹がすいてきた。楽屋通路の一隅に届けられたお弁当とお茶が団員分、置かれている。脇に置かれたリストの自分の名前にチェックを入れて、楽屋でいただく。なかなかおいしい。缶入りのお茶はすぐ飲みきってしまう。やはりペットボトル入りがベター。

しばらくして全員、舞台へ。ここで練りに練った並びの最終確認。中央に位置する団員を決めて左右に広がり全員の位置が確認される。今回、1部、3部が上手側からバス、テノール、アルト、ソプラノの順、2部のミュージカルのみ、男声が中央に位置するような陣形を採用。

そして、ゲネプロの開始。暗譜による大田区イメージソング「笑顔、このまちから」を歌い、団長挨拶。話し始めた途端、影アナのYさんから、「まだですよ!」のマイク音。

1部は「心の四季」をK先生のピアノ伴奏で全6曲を歌い、マエストロ、ピアニストに続いて、団員も下手側にはける。この曲、混声合唱曲集としては、評判の作品で、歌詞も曲もすばらしいのだが、それがどこまで聴衆に伝わるか、大いに気になっていた。練習でも、言葉を明瞭に発するところに力点を置いて臨んだが・・・(後刻、家人はまさにその点を指摘、歌っている側は気持ちよさそうだが、言葉が聞き取れないので、アピール度はさほどでもと。)

つづいて、2部はピアノがY先生になって、ミュージカル、映画ナンバーを5曲。さらに3部では、初めて姿を見せた東響のコンサートマスターグレブ・ニキティンが登場。これでオケメンバー全員が揃ったことに。

フォーレのレクイエムでは、バイオリン出番の演目は限られるので、ニキティンは舞台から降りたり、楽屋へひっこんだりと、かなり自由に動き回る。まあロシアの熊のようなイメージだ。

結構、以前からミューザ川崎でたびたび見かけている人物だが、最近めきめき目方がついて、のっしのっしと歩くし、手も大きく指も長いので、ヴァイオリンに詳しい友人が、使用楽器がまるで1/2サイズのヴィオリンのように見えると。うまい例えだ。かくして、ゲネは滞りなく終了。

少し時間ができたところで、会場2階のロビーへ。お手伝いに馳せ参じた係りの方々が、プログラムへのチラシの挟み込み作業に余念がない。年明け早々にミューザ川崎で第九を演奏する若いオケのメンバーに挨拶。その後の合唱団員応募の状況を聞くと、あまり芳しくない様子。

17時には、本番コスチュームに着替えて、下手舞台袖に集合。いよいよである。自分が担当になっている任務の一つ、SDへの録音の仕方を音響担当スタッフに確認。忘れると困るので、他の団員に自分へのリマインドをお願いする。16GBなので、ONにしっ放しでも問題ないが、一応、休憩時間はその都度、ストップすることにした。

17時半、開場。その前に、招待した友人の一人から、早めに着いたが、もう50人ぐらい並んでいるとの情報がラインで入ってきた。雨が降り出すという悪条件の中、嬉しい情報だ。

舞台裏のモニターでも刻々会場内の様子が確認できる。1階はまあまあの埋まり具合で、とりあえずホッとする。一応全館オープンにしているが2階席は左右のバルコニーが少し埋まったぐらいで、ほとんど入っていない。最終的に、700弱だったようだ。危惧したようなスカスカという状態はとりあえずクリアできたようで、これにもホッとする。

舞台裏で整列して、3列目から順に入場。「笑顔、笑顔!」と声を掛け合ってるが、やはりみな緊張しているのがよく分かる。

プログラムも進み、2度目の休憩後は、器楽演奏が入る。ヴァイオリンとチェロの二重奏でメンデルスゾーンの「舞踏への勧誘」。ここで日本語が達者なチェリストベアンテ・ボーマンが曲目解説。演奏が終わったように聞こえるところがあるが、そこでは拍手をしないでくださいと説明。場内の笑いを誘う。

ところが、果たせるかな、実際に演奏したら、なんとその場面で、拍手が起きたのだ。しかし、そこはヴェテラン、慌てず騒がず悠然と立ち上がってお辞儀をし、なにごともなかったように演奏再開した態度は素晴らしかったし、好感をもった人が多かったようだ。(我々団員は舞台袖にいたので、このあたりの詳細はあとで知ったことだが)

そして特にハプニングもないまま、無事終演を迎えられたのは何より。アンコールで用意した同じくフォーレ作曲の「ラシーヌ讃歌」、アンコール曲なので当初は暗譜を目指したが、仏語ということもあり、結果的には全員楽譜持ちで歌うことに。

全曲終演後、ソリストたちを改めてマエストロが舞台前方へ招き、喝采を浴びてもらうこと、数度。舞台袖へ引っ込むと、われわれ合唱団員にソリストを含む関係者全員から暖かい拍手で迎えられ、胸が熱くなる。

感激に浸る間もなく、ただちに撤収作業開始。ただ、聴きにきてくれた友人たちのことも気になる。ちょっとだけということで、ロビーへ急ぐ。運よく、来てくれた友人たちの半数ほどには挨拶ができた。

すぐまた楽屋へ取って返し、着替えが済むと、再度舞台へ。今度は山台解体作業。それが済むと、楽屋通路に置かれた、来客から団員へのお花や菓子類が、お手伝いに来てくれた方々によって名前ごとにまとめておいてくれてある。今回は自分にも4,5個の銘菓類が。(一つだけお名前がなく、お礼ができず心苦しい限り)それをひっつかんで、同じ建物内にある打ち上げ会場へ。

とっくに打ち上げ開始時間の20時45分を過ぎているのだが、まだ楽屋で歓談しているソリスト、ピアニストの先生方をせかして会場へ誘導し、所定のテーブルへご案内。この時点で予定よりすでに20分も過ぎている。

進行役のSさん、急に決まった話なので、いささか緊張気味。全員席に着くまで、30分近くかかったろうか。撤収作業の中でも細かい作業は女性陣に任されているから、打ち上げには毎回遅れて到着することになり、いつもながら申し訳ない。

頃合いを見計らって、Sさんが手際よく、順に挨拶を仕切っていく。まずは団長、その後、マエストロ、ソリスト、ピアニスト、オケに加わったチェリストオルガニストなどのプレイヤー、賛助出演者などが短く挨拶し、それだけで小一時間。

飲んだり、食べたりする時間がないから、各テーブル、どんどん運ばれてくるお料理でいっぱいの状態。やがて飲み物のラストオーダーとなり、大量に食べ物を残したままおひらきに。

すでに23時を回っている。外は強い北風が吹きすさんでいる。蒲田駅に向かいながら、気がつくと自分のものでないキャリーバッグを転がしていて、持ち主がいない!!

しばらくすると、持ち主のSさんから電話で、二次会会場の居酒屋にいるからというので、元来た道を、取って返す。二次会では、ステマネさんを含め、10人近い団員が延々飲むこと、気づけばとっくに日を跨いでいる。午前1時に一同引き上げたが、後で聞いたら、三次会まで行った者が3人いたらしい。

駅前のタクシー乗り場、終電はとっくにないから、延々長蛇。とても並ぶ気にならず、肩と両腕に荷物を抱え、自宅まで歩いて帰り、長い長〜い一日が終わった!

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フォーレのレクイエムで、PIE JESUを歌うソプラノ、藤永和望。その左は手持ち無沙汰そうなグレブ・ニキティン、マエストロ神成(後ろ姿)の右は出番を待つバリトン薮内俊弥。その後ろ、チェリストベアンテ・ボーマン。愚亭も右端に辛うじて写っている。

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左からピアニスト、吉田貴至、ソプラノ、藤永和望テノール猪村浩之。第2部開演前、舞台裏で撮影。

 

 

(文中敬称略)