ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

大成功!歌劇「ノルマ」(演奏会形式)@オーチャードホール

180317

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 今回も選択が悩ましい両組のキャスティングだが、日程の都合で大村組にした。大村博美のうまさは定評があり、今更のコメント不要。大柄だし見栄えもするから、このような役にはまさにぴったり。大村の歌唱の素晴らしさは、第1幕第1場での「清らかな女神」で存分に示された。

今回、小泉詠子にもブラヴィッシマだ。メゾの領域を軽く超える高音を楽にだしてしまい、「待てよ、この人、ソプラノだったっけ?」と思わずプログラムを見直すほど。そして声質の相性も大村とはぴったりで、第2幕第1場での有名な二重唱にはぞくっとした。

最近、サントリーホールでのコバケンが振るヴェルレクで歌うはずだった妻屋秀和、体調不良で降板、急遽呼び出された青山 貴が普段着で登場し、見事に歌いきって大喝采を浴びたが、今日は絶好調かどうかは別にして、いつもの迫力ある声を存分に浴びてきた。

そして、城 宏憲である。いやぁ、やはり何度聞いても(見ても)すばらしいテノールだ。役によってはその端正な姿と輝かしい発声が却って邪魔になることもあるだろうが、ポリオーネはまさにぴったりのはまり役。

このポリオーネ、ガリア駐留の若きローマの総督で、うまく任期をまっとうすれば、ローマに凱旋することになっていたんだろう。それがスキャンダラスな女性問題を引き起こすという、ある意味、だらしなさをさらけ出す。しかも、最後はノルマが自分自身こそ裏切り者と告白し、毅然と火刑台へ向かうというのに、自分はさっさとアダルジーサとヨリを戻してローマに向かうのだろうか、ちょっとそこは許せないね。

今回は演奏会形式とは言え、オケ、マエストロ、合唱団、ソリスト、会場、etc. すべて一流だから、素晴らしい演奏会にならないはずがない。舞台に背景や装置はもちろんないのだが、背景にどこかヨーロッパの田園風景を思わせる映像が映されていたが、これはなかなか効果を上げていたと思う。この会場は舞台の高さがあるので、一層効果的。

女性陣はそれなりのコスチュームを着用していて、ノルマはなんと4着もとっかえひっかえ!純白→ミッドナイトブルー→黒→ダークブラウンと目まぐるしい。これに引き換え男性陣はタキシードだけとうのがねぇ。古代ローマの衣装を、とまでは言えないが、なにか一工夫できないものか。

動きはそれなりに効果を発揮していたと思う。最初、オケと合唱団の間の空間の山台でソリスト陣が歌うのだが、頃合いを見計らって、舞台前面へ降りてきて演唱する場面も。この切り替えはよかった。

合唱団は二期会合唱団で、ソリストとして活躍している歌手もちらほら散見されるほどのプロで構成されているから、うまくないはずがない。ただ、1幕では、オケより遅れが目立つところがあったのが惜しまれる。それほど練習期間がなかったんだろうが、楽譜を見ている時間が長く、マエストロの棒に神経が行かなかったのかも。

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このマエストロ、風貌だけ見ていると、分からないが、まだ46歳という若さ!それでも、これだけのキャリアを積んでいるから大したもの。終演後、ブラーヴォと歓声が飛び交う中で「ハゲ〜!」という声も聞こえ、本人には分からないと思うけど、なんか気の毒な気がした。(周辺の笑いは取っていたが)

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今日のチケットには7列目との表記だったが、オケピットを閉じて1~5列目まで舞台を広げているから、実際には前から2列目で近い!その分、両脇の字幕を見るのが大変だったし、奥に陣取る合唱団があまり見えなかったのが残念。

#17 文中敬称略