180423 ブロガー対象の内覧会へ応募したところ、首尾よく当選したので、東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館へ。(いつも思うのだが、この長ったらしい美術館名、なんとかならぬものか!三菱一号館美術館にしても、国立西洋美術館にしても日本では総じて長いものが多いが、海外ではルーブル、オルセー、ブラード、ウッフィーツィ、エルミタージュなどなど、極めてすっきりしている。)
まずは通訳付きのギャラリー・トーク。スコットランド国立美術館群 総館長 ジョン・レイトン卿(Sir John Leighton, ロンドンのナショナル・ギャラリー、ファン・ゴッホ美術館の学芸員などを経て、現職。19世紀絵画が専門)⬇︎によるもので、これは滅多なことでは聴くことができない、たいそう貴重な体験であった。
参考作品として最後に展示されていたウィリアム・アラン(1782-1850?)によるカリカチュア風(紙にインク)に描かれたターナーについて、ユーモア溢れる解説をされるサー・ジョン。
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)については、改めて触れる必要のない英国の誇る美術界の巨匠であり、最近では映画まで作られているほどで、波乱万丈の一生と言ってもいいのだろう。そもそも旅好きで、国内はもちろん、遠く海外まで出かけているので、彼の作品の対象となった海や山河は実に多方面に散らばっている。
やはり何と言っても代表的な作品は荒れ狂った海景や、ドラマティックな表情を見せる山岳、河川、疾走する列車、幻想的な風景だが、若い頃から、水彩画やエッチング、アクアティント、メゾティントなど、あらゆく描写法を試していることが本展を通じてよく分かる。中でもいずれかの指の爪を長くしておいて、先端で表面を剥がして、白のハイライトを効果的に表現するスクレイピングアウトという手法は珍しい。
今回の展示は全部で180点ほど、水彩・グァッシュ画が56展、油彩は6点のみ、それ以外はその他の画法によるもの。
以下、主催者から特別許可を得て会場内で撮影した作品(主要作品のみ):
まさに日没寸前の光景を、例のスクレイピングアウト(爪で引っ掻く技法)で一瞬の残照を見事に捉えている。人手に渡ったものの、気に入った作品だったので、ターナーはのちに買い戻そうとしたらしいが実現しなかったとのこと。(この山は偶然ウェールズ旅行をした際、途中まで登山列車で登ったことがある。)
「風下側の海岸にいる漁師たち、時化模様」1802
1811年の作品。郡山美術館蔵
マーゲイトの浜辺の眺め (制作年不明)
亡くなる10年前頃の作品。すでに最晩年に描くことになる抽象的かつ幻想的な色調と輪郭を帯び始めている。これは栃木県立美術館蔵だが、カタログによると、郡山美術館からの出品数は実に50を数える。驚異的な数字だ。
本展の会期は7月1日まで。