ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ビューティフル・デイ」

180605 YOU WERE NEVER REALLY HERE 90分 英国  製作・脚本・監督:リン・ラムゼースコットランド出身 49歳)

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過酷な戦争経験と、父親から厳しい体罰を受けた幼少時の体験で、二重のPTSDを負う主人公が、ある少女誘拐事件でクライアントから依頼され少女を救い出すことに成功する。しかし、その直後、依頼主から逆に殺されそうになる。実は、その影には大きな陰謀が隠されていて・・・云々という組み立て自体は凡庸で陳腐。

ただ、主演のホアキン・フェニックスの怪演ぶりと、独特のカメラ・アングル、ややおどろおどろし過ぎだが効果的だったサウンドで、そこそこ見せ場はしっかり作れているかなという印象。

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⬆︎リン・ラムゼー監督の演技指導?

女流監督にしては残忍なシーンが容赦なく出て来るが、それでも主人公が相手を殺傷する瞬間の描写は極力さけて、今殺されたというような死体を映し出すことで、それなりの効果は生んだように思われる。

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殺された母親の遺体を湖に沈めようとする主人公、いっそ自分も母親と一緒に死のうと思い、ポケットに大きな石ころを詰め込んでブクブク沈んでいくが、救った少女のことが気がかりなのか、ポケットから大きな石コロを取り出し、この場は一命を取り留める。

ホアキン・フェニックス出演作品は、日本公開された全作品の6割ほどは見ている。独特の鋭い眼光と無愛想な表情から、どこか近づき難く、何を考えているか分からない不気味さを感じさせる。そこをうまく引き出して、さまざまな役どころを不器用だが、うまくこなしているように見える。

ベニシオ・デル・トーロ同様、プエルトリコ出身。同じくヒスパニックである、グアテマラ出身のオスカー・アイザックにどこか共通点があるように見えて仕方ない。

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少女役のエカテリーナ・サムソノフ(上の写真で右端、隣はリン・ラムゼー監督)は名前で分かるがロシア系アメリカ人。まだ14歳。「タクシー・ドライバー」のジョディ・フォスター、「レオン」のナタリー・ポートマンを彷彿させる。

内容とはかけ離れているこの邦題、ラストシーンにヒントがある。原題(直訳では「お前がここにいたことは決してなかった」)を一捻りすることもできたと思うが、これはこれで悪くない。

#49 画像はIMDbとALLCINEMA on lineから