180826
さすが全国規模の二期会ならではのコンサート。各地区の代表が参加しての競演で、東京にいては知ることのない歌手たちの上手さに驚嘆した2時間だった。
全国規模の認識はとっくにあったが、レベルの高さに圧倒されっぱなしだった。のっけにいきなりガァ〜ンと打たれたように感じたのが周防彩子の「私はティターニア」!声質も技法も一流だ。関西だから、出演の機会も少なくないと思うが、全国規模の演奏会でトップバッターを務めるには十分すぎる技量の持ち主。
トップバッターゆえか、はたまた最年少(?)ゆえか、募金箱を持って客を見送る周防彩子。
北海道の佐々木アンリにも大喝采。こんなにもうまくヴェルディの難曲を歌っちゃうとは!しかも舞台姿も堂々としていて、小ホールの広々した空間を独り占めするにはふさわしい、まさに歌姫然としていた。
ほかに、「ある晴れた日に」の林里美、「清らかな女神」の国方里佳にもアッパレ!国方の声のでかさには呆れてしまった。すさまじい大音響に、舞台裏にいた司会・進行の池田直樹も出てくるなり、「怖いほどだった」と言ったほど。もちろん、大きければいいというものではなく、それなりの上手さの裏付けがあってのこと。
名古屋二期会の二人が演じた「トスカ」からのシェーナ、「マーリオ、マーリオ」も場内を魅了した。しっかりした発声で、自信に満ちた演唱は圧巻だった。
最後を締めた東京二期会のお二人、今更なのだが、腰越満美はさすがの格調高い、そして気品溢るるトスカを、真紅のドレスで余裕のキメっぷり。
対する黒田博、過去何十回と聞いているが、今日の「私は町の何でも屋」を聞いていて「???」。高音域がなんだかこれまでと全然違うのだ。この曲、バリトンの定番中の定番だが、バリトンにしては、かなり高音域を求められる難物。ところが、それをものともせず、というか、寧ろ楽々と出している!「ムム〜、これは一体?」
終演後、群がるおばちゃんたちをやり過ごして、本人にその点をただしたところ、やはり、急に高音が出るようになったとお認めに。自分の師匠も60ぐらいでハイCを出したというから、誰のことだろうと思ったら、なんとアルド・プロッティ!すかさず自分の体験談を。「その年でしたら、私は1歳でした」と語ったので、思わぬところで実年齢が判明。バリトンの歌手生命は比較的長いとされているから、まだまだ前途洋々!ますます楽しみになってきた。
ところで、東京開催だから、やむを得ないとは言え、地方からの参加者にはあまり語りかけるファンも少なく、気の毒だった。個人的に家族・友人・知人がこのために上京するか、たまたま東京在住者が聞きに来ているのを別にすれば、かなり手持ち無沙汰の場面。私もできるだけ、話しかけるようにはしていたのだが、
こんな様子で、ちょっともったいないなぁ。
#51 文中敬称略